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夜明け 4

「氷河を宜しくね……。 あなたと会えて、とても嬉しいわ」
その時、氷の世界に亀裂が入る。
『ようやく、この世界が崩壊する。
キグナスの母親。ご苦労だったな』
そう言ってヒュプノスは絵梨衣を片腕で抱き上げる。
いつの間にかナターシャの背後には、ヒュプノスと同じ顔で銀の髪を持った男が立っていた。
『ヒュプノス。エリスの依代を連れて行け』
『タナトスもしくじるなよ』
あらゆる場所の氷が砕け始める。
その世界から絵梨衣とヒュプノスが姿を消した。

「神様、ありがとうございます」
ナターシャはタナトスに礼を言う。
彼は不機嫌そうな顔つきになった。
『人間の母親というのは……』
「何でしょうか?」
恐れる風でもなくナターシャは微笑む。
『……オレは他にも行く所がある。 さっさとこの場から離れるぞ』
タナトスは右手を上げる。
するとナターシャの身体が光に包まれた。
その光はだんだんと多くなり、いつの間にかナターシャの姿は消えた。
『母親か……』
タナトスはそう呟くと、その場から姿を消した。


その一撃が氷の柱を打ち砕いた時、氷河の両手からは血が滲んでいる。
氷柱はただの氷で出来ていたわけではなかった。
氷河の血だらけの拳でのみ、ようやくヒビが入ったのである。
(絵梨衣……)
崩れ落ちる遺跡の天井。 その中で彼は一瞬、絵梨衣が自分に微笑んでくれた気がした。
そしてブルーグラードのとある遺跡は、跡形もなく崩れたのである。

「氷河さん……」
安全圏に移動していたナターシャは、白鳥座の聖闘士がこちらへやってくる姿を見た。