「氷河を宜しくね……。
あなたと会えて、とても嬉しいわ」 その時、氷の世界に亀裂が入る。 『ようやく、この世界が崩壊する。 キグナスの母親。ご苦労だったな』
そう言ってヒュプノスは絵梨衣を片腕で抱き上げる。 いつの間にかナターシャの背後には、ヒュプノスと同じ顔で銀の髪を持った男が立っていた。
『ヒュプノス。エリスの依代を連れて行け』 『タナトスもしくじるなよ』 あらゆる場所の氷が砕け始める。 その世界から絵梨衣とヒュプノスが姿を消した。
「神様、ありがとうございます」 ナターシャはタナトスに礼を言う。 彼は不機嫌そうな顔つきになった。 『人間の母親というのは……』
「何でしょうか?」 恐れる風でもなくナターシャは微笑む。 『……オレは他にも行く所がある。 さっさとこの場から離れるぞ』 タナトスは右手を上げる。
するとナターシャの身体が光に包まれた。 その光はだんだんと多くなり、いつの間にかナターシャの姿は消えた。 『母親か……』 タナトスはそう呟くと、その場から姿を消した。
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