「パラスは生きていたの?」
「そうだ。 海の女神たちが大切に守っていてくれた」
「どうして、私に会いに来てくれないの?」
「……パラスがお前の味方である限り、何度でもあの子は傷つけられる。 彼女たちはそれを警戒していた。 だが、パラスは彼女たちのもとから旅立った。
この混乱が収まったら、お前が迎えに行け」 エリスの提案に沙織は嬉しそうに笑う。
「……先生……。ありがとう……」
そう言って沙織は再び目を閉じると、エリスにもたれ掛かった。 「おい!寝るな!! まだやらなければならない事があるんだぞ」 そう言いながらも、エリスは強いて沙織を起こそうとはしない。
「……」 そのまま沙織は眠ってしまう。 「エリスが先生??」 瞬は女神たちの会話に驚く。
だが、星矢はなんとなく納得してしまった。 そしてエリスがシードラゴンの鱗衣に触れると、青い光が発せられた後、鱗衣はその場から姿を消した。 「三人ともアテナを守りたくば、今の会話は忘れろ!
いいな」 そう言って、エリスは沙織の髪を優しく撫でた。
金牛宮では、アルデバランがポリュデウケースの前に立っていた。 二人とも睨み合い状態が続いている。
ムウからの連絡で、アルデバランはポリュデウケースが自分の一撃を待っているらしと既に知らされている。 だが、ポリュデウケースもまた攻撃しようとしない。
奇妙な緊張状態だった。 だが、その時三人目の足音が響いたのである。 ポリュデウケースが驚愕の表情をする。 (何!) 振り返ったアルデバランもまた、その男の姿に驚いた。
そこにいたのはシードラゴンの鱗衣をまとう男の影。 だが、カノンでない。
しかし、再びアルデバランがポリュデウケースの方を向いた時、その姿は何処にも無かった。
通り抜けられたわけではない。 (立ち去ったのか?) 強烈に感じていた敵の気配は、今はない。 そしていつの間にか鱗衣は、金牛宮の床の上で元の姿に戻っていた。
|