INDEX

迷宮 4

同じ頃、五老峰ではカノンがようやくオルフェの戒めから解放されていた。
春麗は自室に引きこもってしまう。
そんな彼女を心配して、傍にはエスメラルダが付き添っていた。
「審判役について知っているのはこれだけだ。 俺はもう行くぞ」
カノンは席を立ったのだが、その瞬間、立ちくらみを起こす。
思わずテーブルに手を置きながら、床に膝をつく。
「どうしたんだ」
シオンは思わず立ち上がった。
「何でもない……」
荒い呼吸を繰り返しながらカノンは再び立ち上がろうとしたが、そのまま倒れてしまう。
『シードラゴン様……』
意識が遠くなる中で、彼はテティスの泣いている声が聞こえた様な気がした。


「この部屋だ!」
双児宮では星矢と瞬は警戒しながら、部屋を覗き込む。足元に水溜まりがあったらしく、小さな音がした。
そして部屋の奥には、一体の鱗衣が置かれている。
「カノンの鱗衣だ……」
闇の中で光る鱗衣を見た時、星矢は何かを思い出しそうになる。
『シードラゴンはね、ずっと待っているの……』
女の子の声が聞こえたような気がして、星矢は周囲を見回す。
「星矢、何?」
「いや……、何でもない……」
とても懐かしい声だったと思う。
緊急時だというのに、彼は急に美穂の事を思い出す。
そして頭を動かして、その考えを振り払おうとする。
星矢は瞬に今の自分の気持ちを悟られたくなくて、急いで部屋を出ようとした時、再び鱗衣が青い光を放った。
今度の光は先程とは比べ物にならないくらいの、強さと衝撃を伴っていた。