黒い靄が次々と沸き上がる聖域。そこに白羊宮から眩い光が放たれた。 その輝きは聖域中を照らす。 『拙いな』 エリスは十二宮の光を見て呟く。
『せっかく闘士たちを復活させたのに、これでは冥王を押さえられなくなる』 彼女は聖闘士と星華の存在を無視して、十二宮へと歩きはじめる。 「どちらへ行かれるのですか!」
咄嗟に星華がエリスの腕を掴む。 魔鈴や他の白銀聖闘士たちはエリスの力を警戒して、止めるのを躊躇っている。 明らかに自分たちでは敵わない何かを、エリスは醸しだしていたのである。
しかし、星華にはそんな事は判らない。 「危ないですよ」 必死に引き止める星華にエリスは薄く笑った。 『……守ってくれて、感謝する』
何か違和感を感じる言葉。 彼女の視線が自分ではなく、別の人を見ているかのように星華は感じたからだ。 『巻き込んで、すまなかったな』 エリスはそう言って星華の横を通り過ぎる。
慌てて彼女はエリスの後を追った。 「星華ちゃん!」 魔鈴の声に彼女は振り返る。 「魔鈴さん。私、星矢の事が心配なんです。 あの方と十二宮へ行きます」
星華はそのままエリスの後を付いて行く。 エリスは星華の方を見た後、驚くべき事に彼女の同行を許したらしい。二人は並んで十二宮へと向かう。
周囲では気を失っていた雑兵たちが、再び立ち上がろうとしていた。 魔鈴は拳を握った後、二人を後を追う。 「魔鈴!」 アステリオンが声をかける。
「あたしも行く。このままじゃ、全滅だ」 彼女の言葉に、その場にいた白銀聖闘士たちは顔を見合わせる。 「ここで消耗戦をやっても、仕方ない」
アステリオンがミスティの方を見る。 「ならば私が一気に雑魚を吹き飛ばす。 その隙をついてあの二人を抱えて、十二宮まで駆け抜けるんだ」
そう言ってミスティは、もう一人の白銀聖闘士の方を見る。 「良かろう」 ケンタウルス星座のバベルが頷いた。 |