一人の男が十二宮へと続く階段を、ゆっくりと上っていた。 彼は何処か楽しそうに微笑んでいる。 (亡者共の妖気が聖域の大地を汚している。 もうここは滅びるだろう。デスクィーン島のように……。
大地の女神たちはこの妖気に耐えられない) 彼は自分の望みが成し遂げられようとしていることに、喜びを感じずにはいられなかった。 (あの娘は心配するほどの者ではなかったらしい。
夜が明ける頃には、大地はその生命力を失い草木は枯れてゆく) 最初は目的があった筈なのに、いつしか彼は滅びというものに酔っていた。 彼自身判っていたのだが、その甘美さゆえに自制が利かない。
(アテナ……。もうすぐ、何もかも終わります) そして彼は三人の黄金聖闘士たちのいる十二宮前の広場へとやって来たのだった。 |