聖域のあちこちで発生している雑兵たちの異変に、聖闘士たちは対応に苦慮していた。 明らかに雑兵たちは黒い妖気に操られている。しかも一度倒しても、次々と妖気は雑兵の身体を乗っ取るのである。
これでは雑兵の身体の方が持たない。 だが、今まで無軌道に攻撃を仕掛けてきた雑兵たちの動きが一瞬止まり、その後目の前の聖闘士たちを無視して何処かに行こうとしていた。
彼らは明らかに何かを目指している。 聖闘士たちは一瞬、十二宮かと思ったが、どうも違うようだった。
社殿の周囲を大勢の雑兵たちが、取り囲んでいる。
絵梨衣を担ぎ、星華を連れて外へ出ようとした魔鈴はその場に立ち止まるしかなかった。 人数に差があり過ぎて、自分は大丈夫でも星華と絵梨衣が無事では済まない気がしたのである。
先程、再度叩きのめした雑兵たちは明らかに星華や絵梨衣を狙っていた。 (この子たちに何があるんだ?) 自分が離れれば、雑兵たちが彼女たちに危害を加える事は確実である。
(でも、闘うしかないね) 魔鈴が覚悟を決めた瞬間、彼女たちの前に銀色の光が舞い降りる。 「マーブルトリパー!」 白銀の聖衣をまとう聖闘士がその技で雑兵たちを吹き飛ばしたのである。
彼らの手から離れた武器が舞い上がる。 それらが彼女たちの頭上に落ちるのを、別の聖闘士が防いだ。 「お前たちは!」 魔鈴は自分たちを取り囲む数名の白銀聖闘士たちを見る。
「手助けなど必要なかったか?」 白銀聖闘士・蜥蜴星座のミスティが魔鈴の前に進んだ。 隣では星華を猟犬星座のアステリオンが守るように立っていた。 彼は少し不思議そうに彼女の顔を見ている。
その時、魔鈴は絵梨衣が意識を取り戻した事に気がつく。 だが、彼女を取り巻く光は消えない。 『面倒な事態になったな……』 その声は女神エリスのものだった。
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