INDEX

分岐点 2

彼女が案内したのは、ブルーグラードからかなり離れた場所。
朽ちた建物の割れ目の前に一行はやってきた。
「こちらです」
入り口は人が一人、なんとか入れるくらいの狭さである。
しかし中は不自然なくらい道が別れている。
どうやらこの場所はブルーグラードの遺跡の一つらしい。
「夢の中では、この奥にその方たちはいました」
彼女は迷路のような中を躊躇いも無く進んで行く。彼らが歩くと何処かで石の転がる音が聞こえてきた。
「かなり脆くなっているな」
遺跡の耐久性が限界にきているのかもしれない。
「ここです」
そう言って部屋の中に入ったナターシャは悲鳴を上げた。三人の闘士たちは声が出せない。
その部屋には一本の氷の柱があり、その中に透明な少女が立って眠っていたのである。
「絵梨衣!」
氷河は柱に駆け寄って、その柱を砕こうとする。
しかし、アイザックとアレクサーから止められた。
「何をするんだ!」
「待て。お前が柱を砕くのは構わないが、ナターシャを巻き込むな!
この氷柱が壊れたらこの遺跡は一気に崩れる」
アレクサーに言われて、改めて氷河は天井を見た。
確かに天井は凍りついているゆえにその機能を果たしているような状態だった。 ここに衝撃を与えたら、他の所まで崩れさる事だろう。
「それに柱を壊したら、本当に彼女は元に戻るのか?」
アイザックの言葉に氷河は、はっとなった。 それは自分でも確証が持てない。
しかし、このまま対応策を考えていたら、確実に彼女の命が危ない気がした。
ナターシャは柱に近付くと、そっと手を触れる。
「大丈夫です。 きっとこの柱を壊せば、この方は目覚めます」
三人の闘士は互いに目で会話を交わす。
「ならば、ナターシャ。俺たちは外へ出よう。
お前が怪我をすることはない」
アレクサーに言われて、ナターシャは頷いた。
「お前はどうする?」
彼は海将軍の方を見る。
「俺も出よう。 ここにいても仕方ない」
アイザックはそう言ってさっさと部屋から出て行った。
「氷河さん、お気をつけて……」
「ありがとう。ナターシャ」
そして部屋には氷河一人が残った。
氷柱と共に崩れるであろう周囲の岩や氷も打ち砕かねばならない。
彼は精神を集中させた。