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「とにかくカノンの傷を手当しよう。
春麗、薬を用意してくれないか?」 紫龍に言われて、春麗は素直に頷く。 その時、彼らの声を聞きつけたエスメラルダが恐々と外へ出てきた。 その少女の姿に紫龍はある疑問を感じ、カノンは何かを思いだしかけた。 ここに初めて来た時は、二人とも春麗がいない事とサガの邪悪な小宇宙の方に気を取られて、彼女の存在は二の次だった。 (瞬に似ている……) 一輝が修行地のデスクィーン島で知り合った少女も瞬に似ていたと言う。 だが彼女は亡くなったと聞いている。 紫龍は春麗の方を見た。 「春麗。彼女は誰なんだ? いなくなった人の友達か?」 しかし、彼女は紫龍の問いに答えられない。 「……エスメラルダさんは記憶を失っていて、自分の名前しか判らないの」 紫龍はその名に驚き、春麗の両肩を強く掴む。 「エスメラルダだって!」 彼の動揺に全員が彼の方を見る。 「春麗!彼女の名前はエスメラルダというのか?」 「そ、そうだけど……、紫龍は彼女を知っているの?」 すると紫龍はエスメラルダの前に立った。 「エスメラルダさん、デスクィーン島にいた事は?」 しかし、彼女は首を傾げる。 だが、その言葉にカノンが思い出したのである。 この少女は迷宮の隠し部屋でサガが見つけた子かもしれないと……。 しかしそれだと、行方不明なのはテティスという事になる。 カノンは思いきって尋ねる。 「おい! お前たちはエウリュディケーという女性を知っているか?」 彼の言葉に貴鬼は驚き、春麗は青ざめる。 その反応で、彼は自分が一足遅かった事を知った。 |