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社殿内では星華が周りの様子が奇怪しい事に、首を傾げていた。 時々、人の怒鳴り声と物が壊れる音が聞こえてくる。 (何かあったのかしら?) 聖域の社殿で乱暴な事態が起こるとは考えにくかったが、耳に届く音は確実に人々が争っている事を伝えている。 (まさか闘いが起こっているの?) 星華は絵梨衣の身体を持ち上げようとしたが、力が足りない。 (エリイさんを避難させなきゃ) その時、勢いよく扉が開き数名の雑兵が部屋に入り込んだ。 星華は雑兵たちが救助に来てくれたのだと一瞬喜んだが、その雰囲気の荒々しさに思わず後ずさりをする。 「娘がいるぞ……」 「この気は、何だ……」 「危険だ」 あまり鷹揚のない話し方だが、彼女は恐怖のあまりそんな事を気にしてはいられない。 そして雑兵の一人がその口から黒い煙を天井へ向けて吐き出した。 「だ、誰か……」 それでも星華は絵梨衣を庇うように、彼らの前に立つ。 彼らが部屋に突進しようとした時、光が走った。 「女の子のいる部屋に無粋な入り方するんじゃないよ」 女性の声と共に、雑兵たちは床に全員倒れる。 彼らの背後から現れたのは、鷲星座の魔鈴。 星華は彼女の登場に、その場に座り込んでしまった。 「星華ちゃん、大丈夫かい?」 「はい。ありがとうございます」 そう言いながらも、星華は涙が零れるのを止めようがなかった。 魔鈴は部屋に入ると絵梨衣の顔を覗き込む。彼女は未だに目覚める気配を見せない。 「ここは危ないから何処かに移動させた方が良いね」 だからといって今の状態で、聖域に安全な場所があるとは思えない。 彼女らの背後で雑兵の一人の肩が動いた。 |