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潜在 4

社殿内では星華が周りの様子が奇怪しい事に、首を傾げていた。
時々、人の怒鳴り声と物が壊れる音が聞こえてくる。
(何かあったのかしら?)
聖域の社殿で乱暴な事態が起こるとは考えにくかったが、耳に届く音は確実に人々が争っている事を伝えている。
(まさか闘いが起こっているの?)
星華は絵梨衣の身体を持ち上げようとしたが、力が足りない。
(エリイさんを避難させなきゃ)
その時、勢いよく扉が開き数名の雑兵が部屋に入り込んだ。
星華は雑兵たちが救助に来てくれたのだと一瞬喜んだが、その雰囲気の荒々しさに思わず後ずさりをする。
「娘がいるぞ……」
「この気は、何だ……」
「危険だ」
あまり鷹揚のない話し方だが、彼女は恐怖のあまりそんな事を気にしてはいられない。
そして雑兵の一人がその口から黒い煙を天井へ向けて吐き出した。
「だ、誰か……」
それでも星華は絵梨衣を庇うように、彼らの前に立つ。
彼らが部屋に突進しようとした時、光が走った。
「女の子のいる部屋に無粋な入り方するんじゃないよ」
女性の声と共に、雑兵たちは床に全員倒れる。
彼らの背後から現れたのは、鷲星座の魔鈴。
星華は彼女の登場に、その場に座り込んでしまった。
「星華ちゃん、大丈夫かい?」
「はい。ありがとうございます」
そう言いながらも、星華は涙が零れるのを止めようがなかった。
魔鈴は部屋に入ると絵梨衣の顔を覗き込む。彼女は未だに目覚める気配を見せない。
「ここは危ないから何処かに移動させた方が良いね」
だからといって今の状態で、聖域に安全な場所があるとは思えない。
彼女らの背後で雑兵の一人の肩が動いた。