紫龍が春麗を連れて家に辿り着くと、外にはシオンとオルフェが待っていた。 シオンは戦闘の行われている方向を見ている。 家の中から貴鬼が出てきた。
「春麗!大丈夫」 「貴鬼ちゃん」 春麗は紫龍から離れると、不安げに彼に尋ねた。 「精霊さんは?」 すると貴鬼は首を横に振った。
「まだなんだよ。今度はオイラが探す!」 その言葉に三人の聖闘士が反対する。 「今、カノンが戦闘状態だ。巻き込まれたら只では済まないぞ。 誰か探しているのか?」
紫龍に問い詰められて、春麗も貴鬼も黙ってしまう。 エウリュディケーは聖域に自分の事を知られたくなさそうだったので、彼女に関わる事は言わないでおこうと決めていたのだ。
しかし、ここで沈黙していては必要以上に疑われてしまい、エウリュディケーに迷惑がかかるような気がした。 春麗は覚悟を決めて、一言だけ告げる。
「女の人……。昨日、家に泊まっていたの……」 紫龍は驚いて貴鬼の方を見る。 しかし、その様子を見ていたシオンが春麗に近付いた。 「ならば、探すのを私も手伝おう。春麗は危ないから此処にいなさい。
童虎の弟子、お前はオルフェと一緒に、ここを守れ。春麗や家の中に避難させた少女に怪我をさせるな。 ついでに十三年前の元凶に挨拶をしてくる」 シオンはそう言って、その場から離れて森の中へと消えた。
この会話に何かを感じた貴鬼は、オルフェの方を見る。 既に彼は竪琴に弦を張り終えている。 「あの人は誰?」 あの自分の師匠に何処か似た雰囲気を持った男性は、自分を見て目を細めるだけ。
いきなりやって来て戦闘態勢になってしまったので、貴鬼は何が起こったのか把握出来ていない。 「あの方はご自分で名乗りたいと思っていますから、今しばらく待って下さい」
オルフェはそう言って笑った。 だが彼は直ぐに真顔になって、紫龍と不安げな春麗を見た。 (しかし、この様な所とユリティースに何の繋がりがあるんだ?)
カノンがユリティースを知っているらしいのも、オルフェには疑問だった。 |