攻撃的な小宇宙のぶつかりを紫龍は背後に感じたが、引き返す訳にはいかない。 相手は確実に春麗を傷つけようとしている。 (いったい何故なんだ)
敵は目的もなく殺戮を行う相手なのか? その時、紫龍は自分に掴まっている彼女の手に力がこもったのを感じた。 「春麗。怪我は無いか?」
彼は立ち止まって春麗に話しかける。 彼女は紫龍の顔をじっと見つめた後、涙を零しはじめた。 「紫龍なの?」 こんなにも近くにいるというのに、彼女には自分が幻のように思えるのかと考え、紫龍は彼女の身体をきつく抱きしめる。
「君が無事で良かった……」 紫龍の脳裏に、夢の中で見た場面が思い出された。 心臓が凍りつくかと思った。 運命が自分の未熟さを、最愛の少女の命で贖おうとする事だけは阻止しなくてはならない。
春麗は力一杯抱きしめられていたが、ふと紫龍が泣いている事に気がついた。 「紫龍……」 「……」 二人は見つめ合った後、お互いに顔をゆっくりと近づけた。
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