INDEX

危機 3

攻撃的な小宇宙のぶつかりを紫龍は背後に感じたが、引き返す訳にはいかない。
相手は確実に春麗を傷つけようとしている。
(いったい何故なんだ)
敵は目的もなく殺戮を行う相手なのか?
その時、紫龍は自分に掴まっている彼女の手に力がこもったのを感じた。
「春麗。怪我は無いか?」
彼は立ち止まって春麗に話しかける。 彼女は紫龍の顔をじっと見つめた後、涙を零しはじめた。
「紫龍なの?」
こんなにも近くにいるというのに、彼女には自分が幻のように思えるのかと考え、紫龍は彼女の身体をきつく抱きしめる。
「君が無事で良かった……」
紫龍の脳裏に、夢の中で見た場面が思い出された。 心臓が凍りつくかと思った。
運命が自分の未熟さを、最愛の少女の命で贖おうとする事だけは阻止しなくてはならない。
春麗は力一杯抱きしめられていたが、ふと紫龍が泣いている事に気がついた。
「紫龍……」
「……」
二人は見つめ合った後、お互いに顔をゆっくりと近づけた。