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黒の聖域 4

デスクィーン島のある場所では、シャイナが膝をついて深呼吸を繰り返していた。
それを説明する事は難しいが、強いて言えば何らかの力が加わったと言っていいかもしれない。
洞窟の奥から突風が吹いた途端、そこに漂う妖気がその存在を強めたのである。
彼女は突然の環境の変化を怪しんだ。
「何が起こったんだ?」
シャイナは傷ついた身体を引きずるように、闇の十二宮へと近付く。
既に仮面は戦闘中に砕けてしまい、彼女は素顔を晒している。 聖衣もボロボロで、ほとんどその機能を果たしていない。
地上で石像に襲われた時、シャイナは苦戦を強いられた。
その圧倒的なパワーと人外のものゆえの戦闘能力、そして相手が生身でない為サンタークロウ等の技が効かないのである。
そして石像を取り巻く白い気が、やはり彼女を攻撃する。
ほとんど手も足も出せない状態で、攻撃を避けるのが精一杯だった。
そして彼女は闇の中を走っていくうちに、何処かの洞窟に辿り着いた。 石像はしばらくその洞窟の方を向いた後、再び闇の中に消えた。
(奥に行ったら、こんなものを見つけるなんて……)
それは闇の中で異様な輝きを発する、もう一つの聖域。
シャイナは最初、自分は幻を見ているのだと思った。
何故、デスクィーン島にこの様なものがあるのか。 そもそも、これは何なのか。
こんな時にサガと対決という事態になったら、きっと一瞬にして自分は殺されてしまうだろう。
(この事をアテナにお知らせしなければ……)
聖闘士としての自分の使命が、胸の内で蘇る。
ここで自分が無駄死にをしたら、聖域にいる仲間たちが次にここを見つけるまで、今以上の血が流れるのが容易に想像出来たからである。
(……二度とあんな悲劇は起こさない!)
シャイナは拳を固く握った。