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聖域は夜だったが、この場所は太陽が昇っていた。果てし無く広がる氷の大地は、静寂に包まれている。 「……」 そして氷河はアイザックの移動能力に驚いていた。 (さっきまで海底神殿にいた筈だぞ……) ポセイドンの神殿の北氷洋の柱にアイザックが触れた途端に、この地へとやってきたのである。 「アイザック、何やったんだ……」 「移動しただけだ」 海将軍はあっさりと答える。多分、それ以上説明する気は彼にはない。 氷河もそれ以上聞かなかった。 (広大な海を守るのに必要な能力なのだろうが、桁違いだ) 改めて自分の兄弟子の実力を見せつけられたような気がする。 「ところで、何処から探すんだ?」 アイザックに聞かれて氷河は腕を組んだ。 曖昧すぎる情報のみでこの広大な氷の世界に居るであろう絵梨衣を探すのは、ほとんど不可能に近い。 「アイザック、ここはどこら辺なんだ?」 すると彼は東の方を指さす。 「向こうがブルーグラードだ。 お前も知っているだろうが、あそこはブルーウォーリアの守護地域だ。 迂闊に関われば……」 その時、その東の地から誰かがこちらにやってくるのが見えた。 そしてその人物を氷河は知っていた。 「アレクサー……」 二人のもとへやってきたのは、ブルーグラードを守るブルーウォーリアの若きリーダー。 そして彼はとても不機嫌だった。 「氷河! 強い気を感じたから、敵かと思い見に来れば貴様か。 性懲りもなく妹に付きまとう気か!」 アレクサーは今にも必殺技のブルーインパルスを使い兼ねない剣幕である。 アイザックは親友の方を向く。 「氷河、お前は何人の女と付き合っているんだ」 「違う! 彼女とは何でもない」 事実であったとしても、この場合は逃げ口実にしか聞こえないセリフである。 アレクサーの怒りは頂点に達する。 「まだそんな事を言っているのか!」 彼が技を繰り出そうとした瞬間、アイザックがアレクサーの腕を掴んだ。 |