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真っ白い光の中で、自分に何処か似た女性が立っている。 彼女は怒っている様だった。 しかし、顔はこちらを向いてはいたが、視線は自分に向けられてはいない。 「ディケー、本気なのか!」 すると自分には見えない誰かの声が、耳に届いた。 「エウノミアー。貴女だって判っているはずよ。 今回、大神ゼウスと海皇ポセイドンがどんなに酷い事をやったのか」 星華は何処かの誰かが目の前の女性と喧嘩しているのだと、一応理解する。 どうやら自分はこの喧嘩に関われないらしいので、彼女は静観する事にした。 二人の女性は尚も言い争っていた。 「判っている!私を誰だと思っている。 私とて掟を司るテミス母様の娘だ。 この世の秩序の守護者だからこそ、私がペガサスの守護をするべきなのだ」 星華の周囲から銀色の光か少しづつ現れ始めた。 「……エウノミアーには悪いけど、あの子とは既に約束をしているから、絶対に私が守護につきます」 すると目の前の女性は沈黙する。 姿の見えない女性の言葉は続く。 「貴女が私を案じてくれているのは、痛いほどよく判るわ。 でもね、あの子たちは私たちの祈りだった……。 エイレーネは平和への希望を無残に打ち砕かれて自分を閉じ込めてしまった。 平和の女神である妹をこんな目に遭わされて、これを見過ごしたら私は正義の女神では無くなる。 私も女神エリスのように、自らの望みの為に動く事に決めました」 星華はこの言葉を何処かで聞いた事があるような気がした。 だが、いつ聞いたのかが思い出せない。 目の前の女性がようやく口を開いた。 彼女は真っ直ぐ星華の方を見ている。 「それでは、ディケー。お前は自分の望み通りペガサスを守護しろ。 私は秩序の女神としての力を封じて聖域に行き、女神アテナの様子を見る事にする。 これから私たちは人間となって生きる事になるが、決して姉妹としては一緒にいない。 同じ時に生を受ける事のみが、私たちがテミス母様の娘達でありエイレーネの姉達である事の証だ」 星華は頷く。 (多分、あの人は私の……) 自分の事を探しにきてくれた弟の師匠という女性聖闘士。 彼女を見た時、自分の中で何かが騒いだのはそう言う事なのかもしれない。 思わずその女性聖闘士の名前で目の前の女性を呼ぼうとした時、再び光が弾けた。 |
「あらっ??」 気がつくと星華は少女の前で立ち尽くしていた。 (夢をみたのかしら??) 女性が出てきた事は覚えているのだが、それで何を見たのかが思いだせない。 (私ったら寝ぼけてたのかしら?? 星矢の看護の後だったから……) そんな調子では目の前の少女の世話に差し障りが出る。 彼女は自分の頬を自分で軽く叩いた。 「エリイさん。これから宜しくね」 星華はそう言って、彼女の手を握った。 |