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覚悟 3

「シードラゴン、話がある」
そう言って彼は一直線にカノンのもとへ向かう。
「何だ?」
「今回、この一件に協力させてくれ」
「それは願ってもないが、何をやるんだ?」
「エリスの依代の魂をまず見つける。
彼女の言っていた氷の国なら、北氷洋を守る俺の管轄地域内だろう。一応南氷洋を守るカーサにも話を付けておく」
アイザックの言葉にカノンは少々驚いたが、直ぐにその真意に気がついた。
「ならば、あいつが依代の少女に危害を加える前に見つけ出すんだ。
とにかく彼女に何かあったら、あの女神は完全にこっちを見限るだろう」
「判った」
アイザックはちょうど絵梨衣を預けて戻ってきた氷河の姿を見ると、彼の腕を掴む。
「氷河。彼女の魂を見つけに行くぞ」
いきなりの申し出に氷河は目を見開いた。
「アイザック……」
するとシオンが氷河に近付いた。
「カミュは任務を遂行中だ。そして少女は巻き込まれた一般人だ。
どちらの問題を先に解決しなければならないか、判っているだろう」
「……はい」
「教皇として命じる。 一刻も早く少女を助け出すのだ」
正式の命令に青銅聖闘士である氷河は逆らわない。
「判りました」
彼は迷いを振り切って、アイザックと共に階段を駆け降りる。
(キグナスもペガサスたちも実力はあるが、まだ若い。
ここで導き方を失敗すると、心を失った闘士を作り上げてしまう……)
シオンは星矢たちの方を見た。
聖戦が終了した今、神聖衣を所有する星矢たちには今まで以上に厳しい自制が必要となる。
そして彼らが何かしらの判断を間違えれば、それは災いとなり力を与えたアテナの立場を危うくし、聖域そのものの存在理由を他の神々から問われることになるのだ。
(人でありながら神を倒した者の属する地。 彼らが次に起こり得る闘いの引き金とならねば良いが……)
そこへ今度は瞬がオルフェとダイダロスを伴って、階段を駆け上がってきた。

「教皇シオン!」
瞬はシオンの元に駆け寄った。
「どうした。アンドロメダ」
瞬の慌てように、一同緊張が走る。
「町では教皇服を着た亡霊が出たって、大騒ぎになっています。 何をやったんですか!」
全員、冷たい眼差しでシオンの事を見ている。 ムウは溜息をついた。
「師シオン。いくら懐かしくても、その姿で町を歩くのは騒動の元です。
皆、若い姿の貴方を知らないんですよ」
「……つい現場の様子を知る為に若い聖闘士や雑兵と会話したのが、そんな騒動になっているとは……。
最近の闘士たちは根性が足りない」
根性で済む問題ではないが、それを言うと説教を延々と喰らいそうなので、全員沈黙を守った。
「シオン様。お久しぶりです」
会話が途切れたところを見計らって、ダイダロスとオルフェが一歩前に出る。
「お前達は、ケフェウス星座のダイダロスと琴座のオルフェか」
シオンは二人に近付く。
この二人が若いシオンを前教皇と認識している事に、他の闘士たちは驚いてしまった。