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だが、当の女神は既に何処かへ去って行ったばかりなのである。
無論、彼らは彼女を呼び出す方法など知らない。 「どういう事だよ。デスマスク!」 星矢が問い詰める。 しかし、デスマスクにだって判る訳がない。彼はアイオロスからのメッセンジャー役になっただけなのだ。 「俺が知るか! だが、俺はアイオロスを信じる。 あの性悪女神を味方にする為なら、シュラを人身御供に出す覚悟もある!」 「ちょっと待て! 何で俺が人身御供にならなきゃいけないんだ。お前がなれ」 シュラの反論はもっともだが、この場合どちらの会話も的外れでしかない。 「何だよ。アイオロスの為に役に立とうって気はないのか? お前、エリスと仲良かったじゃないか」 「曲解するな!」 この会話に他の闘士たちは、どうツッコミを入れて良いのか判らない。 「ムウ。あの二人の会話は何だ?」 シオンの問いに星矢たちもムウの方を見る。 「実は……あの二人とサガ、カミュ、アフロディーテの五人は、二日前にひょんな事からエリスと一晩中酒盛りをしていたんです。 先程キグナスが一人の少女を社殿へ連れていきました。その少女はエリスと関わりのある者で、今回の事件に巻き込まれて危険な状態です」 そして彼は彼女がキグナスの知り合いであると告げた。 ムウの言葉に当の二人が反論をする。 「何言っている。アテナがエリスと何か約束をして、俺達を一晩売り飛ばしたんだよ」 デスマスクは怪しいセリフを臆面もなく言ってのける。 全員何も言えなくなった。 「教皇シオン、こいつの言い分は信じないで下さい」 シュラは慌ててデスマスクの口を封じた。 「とにかく、アイオロスはエリスを味方にしろと言ったんだな」 シオンはそう言うのがやっとだった。 「しかし、私たちはあまりエリスと関わりが深くありません」 そう言ってムウは星矢たちの方を向く。 「ペガサスたちの方が、多分ずっとエリスに関わりが深いと思います」 いきなり話の中心が自分に来たので、星矢は驚いて周囲を見た。 全員が自分の方を見ている。 「そう言えばエリスには亡霊聖闘士がいた筈だ。彼らは何処にいるんですか!」 紫龍の問いにムウが答える。 「彼らは今回の一件には関わっていません。彼女は単独行動をしているのです。 ですからやはり一番関わりが深いのは、貴方たちという事になります」 亡霊聖闘士たちは最後まで敵である事を望んだので、当時の事情は話さない。 他の黄金聖闘士たちもムウの言葉に何も言わない。 星矢は黙ってしまう。 今まで敵と闘いアテナと正義を守ってきたが、このような事態は初めてである。 それも一度敵対した女神に味方になって貰えなど、アイオロスの依頼はかなり難しい。 「でも、星矢が呼びかけたところで素直に来てくれる女神では無いと思うが……」 紫龍は自分の考えを口にした。 「それもそうですね。 彼女は一筋縄ではいかない女神のようですから、別の方法を考えるべきかもしれません」 エリスを知っている者たちは全員頷いてしまった。 そこへアイザックが戻ってきた。 |