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続・神託 3

再びエリスが、場を取り仕切る。
「今度は、エウリュディケーの番だ。
アテナは私の横に立て」
言われた通りに、沙織はエリスの横に立つ。
そしてエウリュディケーは彼女らの前で膝をついた。
エリスは預かっている杖を、前に出す。
「ヘカテ様からの伝言だ。よく聞け。
エウリュディケーに告ぐ。
女神の試練において審判役を果たしたが、少々不手際が見受けられる。
罰として、地上に残す事とする」
思わす、女神ヘカテの側近は顔を上げた。
エリスは言葉を続ける。
「何らかの災いがその身に降りかかろうとも、自らの力で乗り越えよ。
ただ、手を差し伸べるものが居るのならば、それはお前が自らの力で得たもの。
我は何の咎めもせぬ。以上」

伝言の内容に、沙織もまた驚いてしまう。
「エリス。今のは……?」
「エウリュディケーの傍に誰がいようとも、ヘカテ様は関知しないということだ」
「……」
エリスの笑みに、沙織もつられて笑った。

「それでは、私はもう一つ二つ、立ち寄る場所がある。
あとはお前たちで処理しろ」
エリスはそう言って、闇に溶け込むように姿を消したのだった。


「慌ただしい女神だな」
エリスを仲間の話でしか聞いたことの無かったイオは、一連の出来事を見ながら思わずソレントに自分の感想を言った。
「あの方は争いの女神です。
こっちがのんびりとしていたら、いつの間にか洒落にならないところまで追いつめられますよ」
「なるほど」
一度、争いが起これば、その間は全身全霊を持って望まなければ負けることは確実である。
なにしろ、相手は全ての根回しを済ませて物事にあたっているだ。
だからこそ、争いの女神は人間の手にあまる存在なのである。
「では、こっちが闘士である以上、常にあの女神と再会する可能性があるのか……」
「そう言うことです」
ソレントは隣にいたアイザックの肩を叩いた。
「エリスはクラーケンの事を聞いていましたよ。
頑張ってください」
それが、運命の女神達が力を与えた闘士についてなのか。
それとも夢見のことについてなのか。
アイザックは仕方がないとばかりに溜息をつく。
しかし、女神エリスを嫌悪する気にはなれなかった。