「久しぶりだな。遊びに来た」
彼女の言葉に、沙織は女神ヘカテの管理する冥界での出来事を思い出す。
「……エリス……。
どうして貴女がここに……」
茫然としてしまい、それしか言葉が続かない。
この時、春麗が女神エリスに駆け寄った。
「エリスさん……」
彼女は感激のあまり、涙が溢れて抑えられなかった。
「よく頑張ったな。偉いぞ」
エリスの表情は、とても優しかった。
「絵梨衣ちゃん。あの方を知っている?」
美穂が戸惑ったように尋ねる。
絵梨衣もしばらく考えてから、
「みんなの先生」
と、答えた。
「ところで、お前たちの言う『デウス・エクス・マキナ』(機械仕掛けで登場する神)役が、あと百年くらいしないと実行出来そうにない。
略式でもいいなら私がこの場で終わらせるが、どうする?」
意味不明の提案に、沙織も返事のしようがなかった。
そこへエウリュディケーが駆け寄る。
「お願いがあります。
この杖を、女神ヘカテ様にお返しください」
いきなり杖を差し出そうとするのを、今度はエリスが押しとどめた。
「では、まずは準備を整えよう。
今は時間が早すぎる」
そう言ってエリスはさっさと屋敷の方へと歩いてしまう。
闘士たちはあっけにとられながらも、それに従うしかなかった。
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