彼らはローテーションを組んで、少女たちに気付かれないように屋敷の周辺を見張る。
範囲は広大ではあったが、神の闘士である彼らには何でもない事だった。
そしてカノンが周辺を見回っていたとき、いままで静かだった森が騒めいた。
(誰か居るのか!)
しかし、敵意というものは感じられない。
むしろ彼には身に覚えのある気配だった。
結局、カノンは身に覚えのある気配の人物達を屋敷へと連れて帰った。
何しろこのまま帰れとも言いにくい状況だったからである。
「サガ。何があったんじゃ」
童虎は双子座の黄金聖闘士がやって来たことに驚いたが、一緒にいるエスメラルダを春麗が嬉しそうに出迎えた。
エスメラルダは万事控えめな様子だったが、春麗が老師とサガに断りを入れて奥へと連れて行く。
少女たちの嬉しそうな声は、その場の雰囲気を明るくさせた。
その様子に彼は、春麗と絵梨衣がエスメラルダに挨拶をしていなかった事を思い出す。
「わざわざ連れてきたのか?」
「はい」
「ならば幼馴染みであるフェニックスが連れてくると思ったが?」
「彼はシャカがいきなりやって来て、仏縁がどうこうと言って連れていきました」
そう答えながら、サガは何か困惑している風だった。
「どうしたんじゃ?」
「その、自分にエスメラルダの兄役が勤まるのかと……」
「弱気じゃなぁ」
「相手がカノンなら殴って矯正を試みることが出来るのですが、彼女の場合は怖がられないようにしないとなりません」
どんな兄弟仲なのかと、童虎は苦笑いをしてしまった。
しかし、カノンの表情は引きつっている。
同じように見回りをしていたイオが屋敷に戻ったのは、そんなタイミングの悪いときであった。
不穏な怒鳴り声は二階の部屋まで響く。
「大丈夫ですよ。きっと……」
と、絵梨衣が席を立とうとしたエスメラルダを引き止めたのだった。
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