聖域の長かった夜が明け太陽が南天へと移動しつつあった頃、アンドロメダ座の聖闘士が戻って来る。
彼は未だに目を覚まさない姉弟子を抱きかかえていた。
同門の兄弟子たちは、ジュネの様子に複雑な表情を見せる。
今まで仮面に隠されていた妹弟子が綺麗な女性になって再び現れた。
そんな彼女の左手の薬指には、綺麗な指輪が光っていたのである。
「これは……」
よもやと思い、兄弟子の一人が瞬に尋ねる。
すると彼は、
「女神ヘラの指輪だそうです。
僕にくれたうちの一つですが、もう一つは僕が身につけています」
彼はそう言って、神聖衣の左手のアームを外す。
その手の薬指には、同じように指輪が光っていた。
「お前、その指輪の意味を知っているのか?」
「意味って、ペア・リングですよね」
瞬は改めて自分の指輪を見る。
彼の兄弟子達は思いっきり溜息をついたのだった。
兄弟子達が瞬の行動力に頭を抱えて部屋から出ていく。
女神ヘラは結婚を司っている。
これが何を意味するのかくらいは分かっていた。
それでも強引ではあるが牽制はしておかないと、これから姉弟子に恋い焦がれる男が出てこないとも限らない。
静かになった部屋で、瞬は再びベッドの脇に置かれている椅子に座った。
「ジュネさん……」
未だに大事な彼女は目覚める気配がない。
女神ヘカテの神殿でジュネは眠っているだけだとヒュプノスは言ったが、どれくらい待てばいいのか不安が心を重くする。
麗しきエンデミュオンの眠り。
その物語を彼は思い出してしまった。
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