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続々・秘計 4

「オルフェさん……」
春麗はエウリュディケーの恋人である青年の存在に驚く。
「春麗さん。彼女はユリティースなんですね」
彼の問いかけには迷いが無い。
しかし、シュラはオルフェに彼女を渡すのを躊躇った。
「琴座。彼女の姿は以前とは違う」
「構いません。僕に渡してください」
むしろオルフェの目つきは、シュラに対して嫉妬をしていた。
他の男が恋人に触れていることの方が、彼には我慢できなかったのだ。
シュラは仕方なく、エウリュディケーをオルフェに渡す。
彼は恋人を受け取ると、その場に膝をつき彼女の頭を抱え抱きしめた。
「教えてください。 ユリティースの身に何が起こったのですか……」
しかし、その問いの意味に正確に答えられる者は居ない。
アイオロスがオルフェの前で片膝を付く。
「彼女がこうなったのは、このアイオロスの失態が招いたものだ。
私は黒く長い影が彼女に入り込むのを防げなかった」
エウリュディケーはそのまま意識を失ったという。
春麗を庇っての行動だった。
二人の話を聞いていた彼女が、涙を零しながらオルフェに謝る。
「春麗さん。貴女が無事で良かった」
オルフェはそう言って、再び恋人を強く抱きしめたのだった。

廃墟となった神殿跡。
そんな静かな場所に、二つの黒い影が舞い降りた。
この来訪者に聖闘士達は、何事かと身構える。
ただ一人、彼らの間に漂う緊迫感をあまり理解していない春麗が、顔の知っている青年の名を呼んだ。
「ミーノスさん!」
グリフォンの冥衣をまとう青年は、春麗の呼ぶ声に気がついた。
「これは春麗さん」
ミーノスはシオンの方をちらりと見たが、そのまま春麗の方へ近付く。
もう一人の青年は石のようなものの入った金色の鳥籠を持って、オルフェの背後に立ったのだった。

「オルフェ。久しぶりだな」
「……」
アイアコスの挨拶にオルフェは答えない。
だが、ガルーダの冥闘士は特に気にしてはいなかった。
「本来ならお前の望みを叶える謂われはないのだが、借りは返さねばなるまい」
アイアコスはオルフェの前に移動すると、マントから出ているエウリュディケーの髪を掴んだ。
「何をする!」
「ユリティースを助けたいなら黙っていろ」
間髪入れずに怒鳴られて、オルフェは口をつぐんだ。
アイアコスは何かを呟き始める。
それは異国の言葉なのか、オルフェには何を言っているのか分からなかった。
しかし、冥界において三巨頭たちはユリティースに危害を加えようとしたことは一度も無かった。
その記憶がオルフェの行動を思い止まらせる。