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続々・秘計 2

二人の奏者のメロディと共に、岩から光が周囲に拡散する。
その光は周囲の枯れた木々を照らした。
そして光を得た木々が葉を繁らし始めたのである。
この光景に沙織たちは驚く。

岩の傍では光がゆがみ何かの姿を朧げに出現させていた。
巨大な犬。多頭の蛇。巨大な獅子。
他にも異形とも言うべき姿の者たちがいた。
沙織はそれらの姿をどこかで見たことがある樣な気がしてならない。
(もしかしてこれは……)
光が結ぶ像を再び見回す。
(もしも、あの翼ある雄牛が【天の牡牛】といわれたクサリクなら、ここにはバビロニアの魔獣たちがいることになるわ)
だが、それらは動く様なことは無かったので、ただの映像なのかもしれない。
森の木々はいよいよ葉を繁らせる。
光もまた強くなってきた。

そしてどこからか繊細なガラスの砕ける音が聞こえたかと思うと、今度は急に強い風が吹き始めたのだった。
美穂が沙織を風から守るように庇う。
「美穂さん!」
「沙織お嬢さんは大人しくしてください!」
そんな彼女らを、木の葉がまるで細かい剣のように容赦なく襲いかかる。
だが、オルフェもソレントも解呪がもう少しで終わるので、その場から離れられない。
ますます風は強まり、複数の木の枝が彼女たちの方へ飛んできた。
テティスはそれを払おうとした時、木の枝が目の前で止まったのである。

いつの間にか自分の横にいる人物を、彼女は恐る恐る見た。
「シードラゴン様!」
カノンが自らの小宇宙で光の防護壁を作り、少女たちを風の剣から守ったのだ。
沙織もまた自分達の前に誰かがいることに気がつく。
「サ……ガ」
「二人とも、お怪我はないですか」
懐かしい人物の出現に沙織は目を丸くし、美穂は不思議そうに彼を見たのだった。
そのうち解呪が進むと風は止んだが、封印が解けたかのようにバビロニアの魔獣たちが動き出す。
先程は光の像にみえたが、今度は明らかに実体化している。
「どうやら彼らがこの森の空間を維持するための守護者らしい」
解呪を完全に行えば、魔獣が動き出す。
だが、動いていない魔獣を攻撃すれば解呪は不完全になる。
見事というよりも、根性の悪い呪術だった。
「それなら全てを異空間へ葬るまでだ」
彼らはそう言って、戦闘態勢に入る。
その見事な連携に、オルフェとソレントは解呪に集中することが出来た。

そして最後の魔獣がサガのアナザーディメンションで異次元に飛ばされたとき、強い光の爆発が起こったのだった。