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続・秘計 7

この森の異変は、当然、彼の知るところとなる。
シュラは春麗とエウリュディケーの安否を確かめるべく、大木へと戻った。
だが、彼は大木の傍で動けなくなってしまう。
そこにいたのは、動かないアイオロスとそんな彼を抱き起こしているアイオリアだったのだ。
十三年前に見るはずだった光景。
だが、見ずにすんだ出来事。
それを今、自分の目で見ているのだ。
茫然としているシュラに、アイオリアが気がついた。

「シュラ……」
彼は自分の兄と山羊座の黄金聖闘士の方を交互に見る。
シュラは表情を硬くしたまま、二人に近づいた。
「……」
「……」
沈黙したままのシュラとアイオリア。
彼らの硬直にも近い空気を動かしたのは、倒れていたアイオロス本人だった。
「いやはや、油断したよ」
おどけながらアイオロスは上体を起こす。
「……アイオロス」
シュラは何が起こったのかよく分からず、呆然としている。
「シュラ。兄さんは大丈夫だ。
これらの傷はシュラが負わせたものじゃない」
アイオリアの説明に、シュラは思わずその場に膝をついてしまう。
だが、彼は数秒後には冷静さを取り戻すと、何もいわずにただアイオロスを睨み付けたのだった。

「シュラさん。無事でよかった……。
さっき、近くでものすごく大きな音がしたから心配しました」
大木の樹洞の中に隠れていた春麗は、シュラが戻ってきたことを喜んだ。
だが、後ろから二人の青年が一緒に入ってきたことに驚く。
「春麗。その騒ぎについての詳しい話は、こいつらがしゃべってくれる」
シュラは二人の黄金聖闘士をエウリュディケーに説明すると、
「二人を頼む」
と、彼らに言っても外へと出て行った。
アイオリアはシュラを見送るが、何か言いたげに兄の方を向く。
「行ってこい。 シュラ一人じゃ、敵の方が姿を隠し続けるだろう」
兄の言葉にアイオリアは頷くと、同じように外へと飛び出して行く。
「よろしいのですか?」
不安げなエウリュディケーの言葉に、
「大丈夫です」
と、アイオロスは答えたのだった。

シュラは森を走りながら、アイオロス達と話した時の内容を思い返す。
どう考えても黒い傀儡の行動は奇妙だった。
敵が自分から逃げるのは、スフルマシュの力に対抗しうる唯一の存在だからなのかもしれない。
では、なぜ春麗と一緒のときは執拗に追いかけて来たのだろうか。
いくつかの提示される情報から彼らが考えたのは、シュラと戦うことになっても春麗を奪うか傷つけろと傀儡は命じられていると言うことだった。
「もしかすると春麗という少女が目的ではなく、もっと曖昧な条件に今回は彼女が該当したというだけの話かもしれない」
アイオロスは言葉を付け足したが、アイオリアがあることを思い出した。
「兄さん。彼女はデスクィーン島では我々に協力をしてくれた。
敵がギガースの仲間なら彼女を狙う理由はハッキリしている」
確かに一緒にいた女神アテナや美穂の方ではなく、春麗の方に敵はやってきたのである。
敵の本当の狙いは不明だが、今の段階での向こうの目的は春麗なのだとシュラは思った。