この森の異変は、当然、彼の知るところとなる。 シュラは春麗とエウリュディケーの安否を確かめるべく、大木へと戻った。 だが、彼は大木の傍で動けなくなってしまう。 そこにいたのは、動かないアイオロスとそんな彼を抱き起こしているアイオリアだったのだ。 十三年前に見るはずだった光景。 だが、見ずにすんだ出来事。 それを今、自分の目で見ているのだ。 茫然としているシュラに、アイオリアが気がついた。 「シュラ……」 彼は自分の兄と山羊座の黄金聖闘士の方を交互に見る。 シュラは表情を硬くしたまま、二人に近づいた。 「……」 「……」 沈黙したままのシュラとアイオリア。 彼らの硬直にも近い空気を動かしたのは、倒れていたアイオロス本人だった。 「いやはや、油断したよ」 おどけながらアイオロスは上体を起こす。 「……アイオロス」 シュラは何が起こったのかよく分からず、呆然としている。 「シュラ。兄さんは大丈夫だ。 これらの傷はシュラが負わせたものじゃない」 アイオリアの説明に、シュラは思わずその場に膝をついてしまう。 だが、彼は数秒後には冷静さを取り戻すと、何もいわずにただアイオロスを睨み付けたのだった。 「シュラさん。無事でよかった……。 さっき、近くでものすごく大きな音がしたから心配しました」 大木の樹洞の中に隠れていた春麗は、シュラが戻ってきたことを喜んだ。 だが、後ろから二人の青年が一緒に入ってきたことに驚く。 「春麗。その騒ぎについての詳しい話は、こいつらがしゃべってくれる」 シュラは二人の黄金聖闘士をエウリュディケーに説明すると、 「二人を頼む」 と、彼らに言っても外へと出て行った。 アイオリアはシュラを見送るが、何か言いたげに兄の方を向く。 「行ってこい。 シュラ一人じゃ、敵の方が姿を隠し続けるだろう」 兄の言葉にアイオリアは頷くと、同じように外へと飛び出して行く。 「よろしいのですか?」 不安げなエウリュディケーの言葉に、 「大丈夫です」 と、アイオロスは答えたのだった。 |
シュラは森を走りながら、アイオロス達と話した時の内容を思い返す。 |