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続・秘計 6

「それか!」
彼は思わず大声を出してしまう。
今まで岩にある光が自分たちを閉じ込める為に存在すると、微塵にも思いつかなかったのが悔しい。
オルフェは石群に近づくと、竪琴を奏でた。
光は先程設置された像をも淡く輝かせる。
この様子に、美穂は目を丸くした。
「何で?」
彼女は思わず沙織に尋ねる。
すると沙織は、
「私たちには分からなかっただけで、装置の接続部分がちゃんと繋がったのではないですか」
と、簡単に答えた。
美穂は納得したのか、それ以上は何も言わなかった。

(この会話は何?)
テティスは美穂を呪術に関わらせない女神アテナの行動が分からない。
しかし、今度の呪術はオルフェでも簡単には解呪出来なかった。
聖域の時は呼吸するかのように竪琴の音色と光を同調させることが出来たが、今回は同調しきれない光が存在する。
「一人で全てをカバーされないように作られているのでしょう」
そう言ってソレントがフルートの用意をした。
「手伝いますよ」
そして竪琴とフルートの共演が再び行われたのだった。


その森はとても大きく深かった。
しかし、黄金聖闘士である自分たちが脱出できないというのは、森そのものが変なのだと彼らは考える。
「兄さん。少し周囲を見てくるよ」
そう言ってアイオリアは、アイオロスを森の中でも群を抜いて大きな木の傍に下ろした。
「わかった」
彼はおとなしく木の根元に腰掛ける。
動けない訳ではないが、満身創痍なので逆に弟の足を引っ張りかねない。
「絶対にここから離れないでくれよ」
彼の弟は何度か念を押した跡、森の中へと入って行った。

(あの方の示す出口は、この森で正解のはずだが……)
ケイローンが予言の術を外に出さないために、自分を閉じ込める気になったとは考え難い。
アイオロスは手に持っている花の髪飾りを見た。
岩だらけの道に落ちていたのだが、髪飾りは少しも汚れてはいなかった。
そうなると考えられるのは、この道を少し前に誰かが通ったという事である。
髪飾りを見付けなければ、別の道に辿り着いたのだろうか。
そんな事を考えていると、森の中で影が動いた。
彼は大木から離れる。
木ごと自分を攻撃された場合、飛び散るであろう木片の存在がやっかいだったからである。
(なんだあれは!)
山羊座の黄金聖衣に似た黒い闘衣の人物は、まっすぐアイオロスに近づく。
アイオロスもまた、相手が味方などではないことを瞬時に理解した。
アテナの黄金聖闘士と黒い闘士の力が、真正面からぶつかる。
森の木々が大きく騒めいた。