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続・秘計 5

そんな最中に、美穂が不意に光の点滅に合わせて小さく手を叩いた。
沙織は彼女の行動に首を傾げる。
「美穂さん……?」
不審そうに話しかけられて、美穂は慌てて手を叩くのをやめた。
「あっ……、煩くしてごめんなさい」
そう言って彼女は、その場を離れる。
沙織は疑問に思い、淡い光を放つ岩を見た。
しかし美穂がどうして手を叩いたのかが、さっぱりわからなかった。

「いったい何をされているのでしょうか?」
今度は石拾いを始めた美穂の行動に、テティスは首をかしげる。
「でも、むやみに近場にあるというものを拾っているようには見えませんね」
ソレントは不思議に思い、美穂に近づいた。
「美穂さん。何をしているのですか?」
すると彼女は二つの石を一つに重ねる。
それはもともと一つであったかのように、ぴったりとはまったのである。
「何のきっかけで、像が壊れちゃったみたいですね。
可哀相だから、元に戻そうと思ったのですけど……」
「どういうことですか?」
「どうって……」
話がかみ合わず、美穂は困ったような表情をした。
しかし、ソレントには彼女の言っていることがよく分からない。
そこへ沙織たちがやってきた。
「どうかしましたか?」
すると美穂は何でもないといって、その場を離れてしまう。
ソレントは重たい沈黙に耐えながら、美穂との会話を沙織たちに説明した。

「美穂さんには何かが見えているのでしょうか?」
オルフェの言葉に、沙織はドキリとした。
「何かとはなんですか」
思わずテティスが口をはさむ。
しかし、オルフェにもそれはわからなかった。
「彼女だけ、この森の何かと波長が合うのかもしれません。
それが良いことなのか悪いことなのかは分かりませんが、とにかく彼女の手伝いをしてみましょう」
どうせやるべき事がないのだからと、琴座の白銀聖闘士は笑う。
沙織はどうすべきか迷ったが、結局美穂のやる事を手伝う事にしたのだった。

美穂が周辺から持ってくる石は、どれも手のひらサイズだった。
しかし、意図的に彫刻が施されているのかと思うほど、奇抜な形をしている。
「これで最後です」
十一個目の石を美穂は木の根元から持ってくる。
それは運がよかったのか、割れている様子は見られなかった。
他のものの中には3つに割れているものがあったりして、石は沙織たちが蔓を使って形を固定する。
多少のいびつ感は拭えないが、それなりに形になっていた。
「この後、何かやる事は有りますか?」
「えっ?」
「さっき手を叩いていましたね」
自分の行動を怪しんだりしないオルフェの問いに、美穂は安心したのか素直に答える。
「その……、あの光が歌を歌っているように感じたんです。
でも、私の手拍子じゃ駄目だったみたい」
その言葉に、オルフェは聖域であった光の魔方陣を思い出した。