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続・秘計 4

本当に相手は操り人形なのだろうか。
シュラの脳裏にはそんな疑問が過ぎった。
敵はスピードもパワーも自分の予測を遙かに越えている。
これが地上へ現れたら、あっという間に多くの生き物の命は奪われてしまうだろう。
その時、黒い傀儡が腕を振った。
それにより発生した風は、シュラへと向かう。
だが、彼はそれを避けたので、風はそのまま近くの岩を砕いたのだった。


突然、石群の中にあった岩の一つが淡い光を放ちながら消える。
しかし、側にいたオルフェたちにも敵の気配は感じられない。
だが、彼らにはこれが自然現象だとは到底思えなかった。
そして美穂は、たくさんある岩の一つから小さな青い光が無数に列を成しているのを見つけた。
「落書きの跡かしら?」
彼女の言葉に沙織とテティスが光を見たが、それはバラバラに点在する光の粒だった。


(ここで決着をつける!)
シュラはその決意で技を仕掛ける。
ところが先程まで自分たちを追い詰めていた敵が、今度は自分から離れたのである。
そのまま相手は森の奥へと消えてしまう。
彼は予想外の展開に、あっけにとられた。

(どういう事だ?)
春麗が一緒のときとは行動が全然違う。
エウリュディケーの言葉では、生きているものは全て滅ぼす命令が施されているはず。
それなら聖闘士である自分もまた攻撃対象でなくてはならない。
(彼女が知らないだけで、何か他にも命令されているのか)
山羊座の黄金聖闘士は、黒い傀儡を追いかけた。
しかし、相手は気配というものを持っていない。
だが、どんなに困難であろうとも追跡をやめるわけにはいかなかった。


岩にある光の点はしばらくすると、美穂たちの目の前でバラバラに点滅を繰り返した。
螢光塗料でも塗られているのかと思ったら、どうやら違うらしい。
それは岩が呼吸をしているように見えないことも無かった。
美穂は岩の様子に首をかしげる。
「小さな虫がいるのかしら?」
そんな彼女の様子を、テティスはじっと見ていた。

(あれは何……?)
止血はしてあるが、傷の痛みは止めようがない。
それが今の自分が現実の世界にいるのだと分からせてくれる。
だが、美穂の傍にある淡く青い光は現れたり消えたりを繰り返しているので、目の錯覚なのかと思ってしまう。
ところが一番近くにいるはずの美穂には見えていないようだった。
「テティス。大丈夫か」
ソレントが小さな声で尋ねる。
「はい。ご迷惑をおかけしました」
怪我をしたことを詫びる彼女に、ソレントは大きな溜息をついたのだった。

「森ごと閉じ込められたようね」
沙織はそう言って暗い空を見上げた。
オルフェはうかつに同意できず、沈黙を守る。
場所を移動したのは良いが、出口らしきものは未だに見つからない。
不審者の影が無いのは救いだが、このままでは外へ出るための情報が無い。
そうなると永久に森の中に閉じこめられてしまう事になる。
これはある意味絶望的とも言えた。