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続・秘計 3

編み目の細かい金色の鳥籠の中には、石で作られたかのような蛇の彫像があった。
ミーノスは籠を持ち上げて、彫像を観察する。
しかし、蛇に動くような気配はない。
「さっきの気配は気のせいでしょうか」
アイアコスからギガースたちに力を与えていた蛇だと言われたので、とにかく逃げられないように金の鳥籠に放り込んだのである。
心なしか蛇の彫像が、首を引いたようにも見える。
そんな反応を面白がっていると、アイアコスが部屋に入ってきた。
「ミーノス。蛇はどうした」
「こちらに置いてありますよ」
彼はそう言って、鳥籠を指さす。
「随分、豪華だな」
「一応、迷ったんですよ。
女神アテナが女怪メデューサ退治のおりにペルセウスに渡した袋の種類が特定できれば、それにしたのですが……」
その返事にアイアコスは腕を組んで、しばらく考え込む。
「それなら女神に直接尋ねるか」
「それが良いでしょう」
二人は仕方がないといった風に頷きあった。
だが、部屋の外で仕事の報告をしようとしていた彼らの部下は、上司が仕事から逃げようとしている事に気がついて真っ青になった。


枯れ木ばかりの森は、ほとんど音もせず静かな場所だった。
「周囲の様子を見てきます」
オルフェはそう言って森の奥へと向かう。
そして沙織たちはオルフェに言われたとおりに岩陰にしゃがみ込んでいた。

テティスが一応護衛として、その場に残っている。
ソレントとしては自分が前線で動きたいのだが、その意見は宴からの帰り道に他の闘士から止められた。
何かあった時の切り札が最初から動いては意味がない。
それが沙織と闘士達の意見だった。
そんな中、美穂が自分の寄り掛かっている岩に奇妙なものを見つける。
(何だろう?)
少し大きめの石をどかしてみると、その下から錆びた金属が出てきた。
(これは……)
美穂はそれをじっと見る。
「どうしたのですか?」
沙織に話しかけられて、美穂は一呼吸間を置いた後見つけたものを見せた。
「首飾りみたいですね」
彼女はそう断言したが、それは誰がどう見ても首飾りには見えない。
「首飾り?」
テティスは首をかしげる。
「あれっ?」
美穂もまた断言をしたことに困惑してしまった。

枯れ木の森。
正体のわからない敵。
(これは……、あの時と同じだわ!)
沙織は美穂たちの様子を見ながら、遥か昔の出来事を思い出した。
あの時は地上に枯れたままの森があるというので、自分とパラスとで調べに来たのである。
何しろ放っておくと、ペルセポネが単独で動きかねなかい。
経験上、そっちの方が騒ぎが大きくなるのは十分理解していた。
結局、問題の森は中をウロウロしている間に勢いよく木々が芽吹き始めたのだった。