「それは……」
言葉を濁す女性に、シュラは静かに言った。
「この場限りの嘘は止めて貰いたい。
その様なことをされたら、こちらはこの場で春麗を連れて外へ出なくてはならなくなる」
真実の中に嘘を散りばめられると、人は判断に迷う。
信用しにくくなってしまうのである。
女性にも彼の考えていることは理解できた。
「今、私はこのような姿になっています。 それを知られたくはありませんでした」
エウリュディケーの寂しそうな様子に、春麗は手に力を込めた。
「どんな姿でもエウリュディケーさんはエウリュディケーさんです。
オルフェさんだって……」
「オルフェには言わないでください。 このような姿を知られるのは、とても辛いのです」
昔の面影を止めない、恐ろしいほどに変貌した自分の姿を恋人に見られなく無い。
その気持ちは辛くても春麗にも理解できた。
「ごめんなさい」
春麗はエウリュディケーから手を離す。
彼女だって恋人に会いたくはないはずがないのだ。
二人の会話が一区切りついたところで、ようやっとシュラは一番尋ねたいことを質問した。
「どうやら貴女はアレが何なのか知っているようだが……」
エウリュディケーは首を縦に動かした。
「はい。あれは人が身に纏う闘衣ではありません。
神々が太古に滅びた力ある者達の複製として作ったものなのです」
その説明に、シュラの脳裏で何かが弾けたような気がした。
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