女神ヘカテの神殿は、ほとんど跡形もなく破壊された。
既に呪術の書かれた紋様は、割れてしまって瓦礫と化している。
そして敵対勢力は、目的を果たしたとばかりに神殿から立ち去ったのだった。
「よもや、女神ヘカテの神殿ごと破壊するとは……」
太古の女神の神殿を粉々にしたのである。
相手が天上界に属する者たちであったという推測は間違いだったのだろうか。
シオンは雨の止んだ夜空を見上げる。
雲の切れ間からは星が見えていた。
シオンが聖域に戻って体勢を立て直すべきかと考えた時、瓦礫の上で若き聖闘士達がなにやら騒いでいた。
「どうしたんじゃ」
童虎が自分の弟子に騒ぎの原因を尋ねる。
すると紫龍もまた、首を傾げながら答えた。
「それが、邪武の持っているランプが何もしていないのに灯りがついたのです」
むしろ、敵の攻撃に巻き込まれたので壊れている可能性が高かったのに、そのランプは小さな明かりを灯していた。
「女神ヘスティアの加護か?」
シオンは彼らに明かりを消さないように言うと、一旦聖域に戻ることにした。
まだ救いは残されている。
ただ、ランプの替えだけは用意した方が良いと判断したのだった。
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