「お願い。この牢を開けて!」
彼女はニンフ達に駆け寄る。
灯りに照らされたその姿はマントをあたまから被っており、僅かに見える肌は痩せた老婆のようだった。
『エウリュディケー。どうしたの』
ニンフ達は仲間の変貌に驚く。
『何故、そんな姿なの』
しかし、彼女はその問いに答えられない。
何故この姿なのか。
杖の力なのか、女神ヘカテの下した罰なのか、彼女にも分からなかったからだ。
そこへニンフの一人が、石の鍵を持って現れた。
『この鍵でしょ。今、開けるわ』
石畳の隙間に鍵を差し込む。
すると、牢そのものが消え去ったのである。
後に残るのは広いだけの空間だった。
外へと向かうエウリュディケーを見送った後、ニンフたちは各々お気に入りの場所へと戻った。
『エウリュディケーを外に出して大丈夫かしら?』
『でも、ヘカテ様の杖が悪用されたら、エウリュディケーはもっと酷いお咎めを受けるわ』
女神ヘカテの側近について案じてはいたが、ある事に彼女たちは気がついた。
『それにしても、よく鍵が見つかったわね』
すると鍵を持ってきたニンフが首を傾げながら答えた。
『それが、仮面の聖闘士様の眠っていた部屋にあったの。
私が様子を見に行ったら、目の前で姿が消えて仮面と鍵を残されたのよ。
きっとエウリュディケーの為に力を貸してくださったのだわ』
その断言に、他のニンフたちもまた簡単に納得したのだった。
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