沙織達が元の世界に帰るために用意された道は真っ直ぐだった。
鬱蒼とした森も岩だらけの道も、ランプの明かりを頼りに彼女たちは歩く。
岩だらけの場所から森へと入ろうとした時、先頭にいたオルフェが立ち止まった。
「……」
道が森の手前で途切れていたのだ。
「右か左に移動して、道を探すしかないようです」
しかし、その道が正しいのかは疑問が残る。
ささやかな悪戯なのか、悪意のある者の仕業なのか。
ただ、ささやかな悪戯で長い間家に戻れなかったという話も無いわけではない。
沙織と闘士達はどう動こうか、しばし悩んでしまった。
不意に春麗が後ろを振り返る。
「どうしたの?」
つられて美穂も来た道のほうを向いた。
「髪飾りを落としちゃったみたい」
髪に付けていた花の飾りが、いつの間にか消えていた。
「どこで落としちゃったのかな……」
引き返そうにも、まだ夜の時間で周辺は暗く、灯りは一つしかない。
「諦めるしかないみたいね」
二人ががっかりしたとき、風の音らしきものが彼女たちの耳に届いた。
「危ない!」
シュラとオルフェが二人を庇う。
聖衣をまとっていた彼らは、身体に複数の衝撃を感じた。
傍で女性の悲鳴が上がる。
「テティス!」
沙織を庇うソレントの前に、テティスが割り込んだのだ。
「私は大丈夫です」
だが、テティスの肩は鋭利な刃物のようなもので切られていた。
そこから血が滲み出る。
「とにかく森へ入りましょう!」
次の攻撃が繰り出される前に身を隠さなくてはならない。
「美穂さん!」
沙織は彼女の腕を掴むと、森へと走り出したのだった。
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