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続々・夜行 7

それが滅びであったと気がついた時には、既に事態は終わりを迎えていた。
繁栄を誇った神々の終焉。
それはなんと静かに自分たちを浸食したのだろうか。
敵がいて、力の限り闘って滅びるのならば運命だと諦めもつこう。
しかし、自分たちに訪れたのは自らの心と体の変質だった。
戦場に異国の神々がいる。
その中でも武装した女神たちの集団の中に、その者はいた。
凜とした様子で我々を見ている。
その女神はこちらにやって来ると、私の前に立った。


シュラは目の前で現れては消える映像に戸惑いを覚えた。
自分は幻覚を見せられているのだろうか。
しかし、その映像も一柱の女神が何かを言いかけた時、闇に溶け込むように消える。
(あれは女神アテナ……に、似ておられたが……)
沙織によく似ていたが、向こうの方が年齢が上に見える。
とにかくシュラは周囲の様子を確認した。

デスクィーン島から何処かに飛ばされたのは分かったが、今居るところは森の中らしく辺りは静けさに包まれている。
しかし、その中で気配を巧みに隠している者がいた。
「……」
「黄金聖闘士がここで何をしているのですか」
藪の中から現れたのは、人魚姫の海闘士だった。
彼女はビックリした表情でシュラを見ている。
しかし、彼女の問いはシュラの方が聞きたいくらいだった。

席を外していたテティスが戻って来た。
その後ろにいた黄金聖闘士の存在に、他の者たちは驚く。
「如何されましたか!」
オルフェは聖域に何かあったのかと驚いたが、シュラに答えられる訳が無い。
そこへいきなり突風が宴の会場を通り抜ける。
その風の強さに、春麗の髪飾りが一つ森の方へと飛ぶ。 シュラは近くにいた春麗を風から守っていると、誰かに呼ばれたような気がした。
そして少し離れたところにいる女性たちを見かける。
心臓が大きく脈打つ。
『アァ、無事ナヨウダ……』
脳裏に聞こえた声は、確かにスフルマシュのものだった。

(なぜ、シュラがここに?)
宴へと戻された沙織は、山羊座の黄金聖闘士が何故いるのか分からなかった。
『古き王を呼んだのは私です』
夜の女神は、そう沙織に告げた。
「ニュクス様が……?」
『古き王は貴女の母であるメティスに対しては信頼を寄せていました。
ですから貴女の事が心配だったのでしょう。
世界を壊されたくはないので、こちらで勝手に招待しました』

母神の名を出されて、沙織は太古の女神たちを見た。
しかし、彼女たちはそれ以上は何も言う気がないらしく、そのまま宴の会場へと移動してしまった。