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続々・夜行 2

辺りは静けさを取り戻す。
『あなたは……』
王妃は涙を零しながら、氷河の方を見た。
「俺は白鳥座の聖闘士・氷河」
彼女は絵梨衣の方を見る。
その表情は何処か驚いているかのようだった。
『クリュタイムネストラー。 この方に会いたいから、聖域に行きたかったの?』
神話の時代の事を引っ張りだされて、絵梨衣は戸惑った。
だが、氷河が傍にいることに勇気づけられて、彼女は王妃の前に座る。
「私は氷河さんをお慕いしています」
絵梨衣の返事に、王妃は嬉しそうに微笑んだ。


王妃が正気なのかどうかは未だに判断はつかないが、少なくとも三人の会話は成立している。
そんな最中、エスメラルダはカノンに担がれた状態で目を覚ます。
「……カノンさん?」
「気がついたか」
エスメラルダは周囲の様子を見回す。
記憶が曖昧で、自分が何処に居るのか見当がつかない。
「ここは何処ですか?」
彼女は自分の疑問を口にしたが、カノンもどういう説明をするべきか迷ってしまう。
「ここはあそこに居る女性の家だ」
彼は思いっきり適当なことを言う。
「あの方は?」
「お前を今まで実の娘のように大事に保護していた女性だ」
その説明にサガは何か間違えているような気がしたが、その他では今すぐ説明できる言葉が見つからなかった。
「あの……、一輝は?」
「聖域でお前が戻るのを待っている」
そんな二人の会話に王妃が気がついた。
『ヘレネ……』
彼女はエスメラルダの方を見る。
「あの女性は、お前を実の娘のように思っている。
怖がる必要はない」
カノンは小さな声でエスメラルダに行くよう促す。
何度も自分を助けてくれた青年の言葉に、エスメラルダは素直に王妃に近付いたのだった。