王妃が正気なのかどうかは未だに判断はつかないが、少なくとも三人の会話は成立している。
そんな最中、エスメラルダはカノンに担がれた状態で目を覚ます。
「……カノンさん?」
「気がついたか」
エスメラルダは周囲の様子を見回す。
記憶が曖昧で、自分が何処に居るのか見当がつかない。
「ここは何処ですか?」
彼女は自分の疑問を口にしたが、カノンもどういう説明をするべきか迷ってしまう。
「ここはあそこに居る女性の家だ」
彼は思いっきり適当なことを言う。
「あの方は?」
「お前を今まで実の娘のように大事に保護していた女性だ」
その説明にサガは何か間違えているような気がしたが、その他では今すぐ説明できる言葉が見つからなかった。
「あの……、一輝は?」
「聖域でお前が戻るのを待っている」
そんな二人の会話に王妃が気がついた。
『ヘレネ……』
彼女はエスメラルダの方を見る。
「あの女性は、お前を実の娘のように思っている。
怖がる必要はない」
カノンは小さな声でエスメラルダに行くよう促す。
何度も自分を助けてくれた青年の言葉に、エスメラルダは素直に王妃に近付いたのだった。
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