女神の白い翼を持った王妃レダは、子守歌を歌ってあげている少女が涙を零していることに気が付いた。
起こしてあげようかと、彼女は少女の頬に軽く触る。
その時、部屋の扉が開いた。
『ポリュデウケース……』
閉じ込めていた筈の息子が、少女を抱き抱えて部屋に入ってきたのである。
「母上。ヘレネはどうしましたか」
彼の言葉に王妃は、膝枕をしてあげている少女の方に視線を移した。
『ヘレネは眠っています。
クリュタイムネストラー。母の傍を離れては駄目だと言ったでしょう』
絵梨衣を見る王妃の表情に変化が現れる。
彼女はサガと絵梨衣の後ろに居る人物に気がついたのだ。
『カストール……』
漆黒のマントを被った青年。
ポリュデウケースと同じような姿をした人間の青年の登場に、彼女は目を見開く。
そして王妃レダは絶叫した。
その声に共鳴するかのように、周囲の壁が震える。
「彼女を守れ!」
サガの合図に、カノンが行動を起こす。
彼はエスメラルダを担いで、強引に彼女から引き離したのだった。
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