女神キュベレーが、いきなり床に呪術の紋様を書いた。
そして水鏡のような床に映し出された映像には、ジュネを抱きかかえて女神ヘカテの神殿を脱出したアンドロメダ座の聖闘士の姿が見える。
『この子が恋敵のようね』
沙織はその様子をいきなり見せられて、言葉を失ってしまう。
『うかうかしていると、お前のお嫁さんはこの者に取られてしまうわね』
女神キュベレーの言葉に、獅子は踵を返して闇の中へと消えていった。
「あの者から【地の獅子】を奪えると思っているのですか」
沙織としては不用意に太古の女神と事を構えるのは避けたいが、相手は挑発し続けている。
そして、こんな状態だというのに女神ヘカテは何も言わない。
沙織としては女神キュベレーの行動よりも、女神ヘカテの沈黙の方が怖かった。
聖域は知らぬうちにあらゆる女神達を敵に回していたのだろうか。
とにかく短慮な振る舞いだけは避けなくてはならない。
沙織は再び瞬の様子を見た。
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