過去の経緯を賢者ケイローンから聞かされたアイオロスは、どうすべきなのか迷った。 ポリュデウケースが現れない限り、勝負は次の代に持ち越される。 そんな不安定な状況の中で彼に出来たのは、女神アテナまでも手にかけようとする彼を止めるということだけだった。 しかし、今回のギガントマキアにてポリュデウケースは確かにサガに抑え込まれた。 「あの時、何か希望の光が見えたような気がしたよ」 神の子を制する意思力を双子座の黄金聖闘士が持ったのである。 聖域は王妃レダの呪縛から抜け出せるかとアイオロスは思った。 ところが事態は意外な方向に突入したのである。 「あの時、この世界への道が開いたから王妃レダに話を付けるチャンスだと思ったのが失敗だった……」 アイオロスは神殿内部にて女神ネメシスに会ったが、問答無用であの場所に閉じ込められたことを告白した。 「王妃レダの意識が勝っていたということか?」 「それは判断のしようがない。 我が子を殺されたのだ。 女神ネメシスだって、聖闘士憎しと思うことだってあるだろう」 怒りの矛先を何処に持っていけば良いのか。 誰を恨めばいいのか。 時間が経ちすぎて、ただ気持ちだけが彷徨い続けている。 カノンは何かが引っ掛かった。 しかし、それが何のかは分からなかった。 |
絵梨衣は既に暗い建物の中を行く当てもなく壁を支えにしながら移動していた。 迂闊に部屋の扉を開けると、そこには王妃レダが居そうで開けられない。 だが、背後で何かの音が聞こえたとき、彼女は近くにあった扉の奥に入った。 隙間があったので、難無く部屋に入り込む。 ところがその場所には先客がいたのである。 しかも、その人物は薄暗い部屋の奥で、壁に両手を鎖でつながれていた。 (誰か……助けて……) 彼女はその場に座り込んでしまった。 |