「なんでアイオリアがここに居るんだ?」 牢獄のような空間から助け出された彼の問いは、正直ではあるが間抜けでもあった。 「何でって、俺は……」 アイオリアはどう説明しようかと言葉に詰まる。 色々と伝えたいことが有りすぎて、逆に言葉に詰まってしまった。 そんな兄弟たちの間にカノンが割って入る。 「アイオロス。全部喋ってもらうぞ。 奴とお前は何をしにここへ来たんだ」 それは迂闊に隠し事をすれば必殺技を放つという目つきだった。 サガもまた女神ニュクスに会いに行くとカノンに伝えていたのだ。 アイオロスはどうしようかと迷ったが、そんな態度にカノンとキグナスの聖闘士の表情が一段と険しくなる。 彼は覚悟を決めた。 「……女神ニュクスの神殿には行ったのか?」 「まだだ。それ以前に神殿に辿り着けない。 ここに招待されたはずのシュラは見つからないし、ケールたちの助言が無ければこの場所すら見つけられなかったという状態だ」 実際は女神ニュクスの娘たちである【黒い翼のケール】たちですら、断片的なことしか言ってはくれなかった。 これは相手が意地悪をしているのではなく、どちらかというと彼女たちの使う言葉が古いという方が近い。 ただ、白鳥座の聖衣に運命の女神たちとのつながりがあったお蔭なのか、彼にのみ何となく言っていることが理解できたのである。 「それでも向こうは、アイオロスを【賢者の弟子】としか言わなかった」 その為、氷河達は牢獄を壊すまで、閉じ込められているのがアイオロスとは思わなかったのである。 「……兄さん。いったい何があったんだ」 弟が追いかけてきた以上、関わるなといっても無駄な話である。 アイオロスは三人の闘士に付いて来いという仕種をした。 「王妃レダの怒りを抑えない事には、聖域は常に滅びの危機に立たされる」 その言葉にカノンの心臓が大きく脈打った。 |
神話の時代、二人の娘を失ったスパルタの王妃は女神ネメシスと同化してしまう。 |