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招待 4

「ここが入り口だ」
湖から少し離れたところにある横穴にバイアンは入った。
彼自身が穴をあけたためか、周辺の岩が破壊されて間もない。
「バイアンは何故、ここを知っているんだ」
アイザックは思わず尋ねた。
他の闘士達が誰も見つけられなかった場所である。
たった一人だけが知っていたというのは、何か出来すぎな気がしてならない。
しかし、バイアンの返事は簡単だった。
「あのギガントマキアの時、あの湖だけが変だった」
「どういう風に?」
「あの湖は一カ所だけ下から上に水が流れた。
多分、何か細工がされていて、意図的に水が注ぎ込まれるように作られているのだろう」
それは雨の降っていたとき限定の現象なので、晴れている今の時間にはわからなくても仕方が無い。
バイアンはどんどんと奥へと進む。
洞窟の周辺には氷の壁が見え始めた。
「……」
カノンはその様子に、何かが引っ掛かった。
「ここは、最初に見つけた遺跡の道に似ているな」
アイアコスもまた自分が気がついたことを口にした。
二人の少女が閉じ込められていた遺跡。
あそこは崩れたはずだが、誰もそれを確認してはいない。
そして二人の予想は現実となって目の前に現れたのだった。

何も無い円形の遺跡。
本当に何も無いのだが、部屋自体は明らかに計算されて作られている。
その部屋に入った時、シュラの心臓が大きく脈打った。
(この感覚は……)
聖衣の中で眠る異形の神が目覚めようとしているのだろうか。
(部屋に何があるのだ)
彼は慎重に歩く。
そしてとある一点にきた時、いきなり彼の足元が光った。
「なにぃ!」
シュラの黄金聖衣が輝きだし、それに呼応するかのように床が光る。
(スフルマシュの力に反応している)
それがいったいどういう意味を持つのかは、シュラ自身にもわからない。
壁には無数の紋様が浮かび上がる。
部屋に充満する力は徐々に強まり、シュラ以外の闘士たちは壁に叩きつけられた。
圧倒的な力だった。

闇の中でスフルマシュが嗤う

「門が開く!」
シュラがそう叫んだ瞬間、壁の紋様は強く光った。
「女神ニュクスの守護空間と繋がるぞ」
彼の言葉に誰もが驚く。
「なんだと!」
「くっ……。どうやら招待されたらしい」
その言葉を残して、彼の体は光に飲み込まれる。
「シュラ!」
しかしカノンが名を呼んだところで、本人の姿は何処にも無かった。