ギガントマキアを終えた島には、静かな時間が流れていた。 もうすぐ太陽が沈もうとしている。 「だいたい聖闘士は基本的に呪術に関しては管轄外だ。 やたらと探し回ったって、見つかるわけないだろう」 アイアコスの言葉は真理を言い当てていた。 ただ、発言者が冥界三巨頭の一人であるというのが、ミロとアイオリアには納得しにくかった。 「では、アイアコスには分かるのだな」 聖域から急いでやって来たカノンは、事態が全然進んでいないことに軽く苛立つ。 しかし、ガルーダの冥闘士はきっぱりと、 「呪術が発動していれば簡単に察知できる。 だが、何の効果も出さないものは落書きと変わらない」 と答えた。 その堂々とした返事に誰もが落胆してしまう。 既に彼らは島中を調べ尽くしている。 だが、これといって不審なものは見あたらず、時間だけが無情に過ぎてゆく。 どのような手を打ったらいいのか。 闘士たちは何一つ思い浮かばなかった。 そんな重苦しい空気の中、今までこの場を離れていたバイアンが彼らの所へ戻ってきた。 「シードラゴン。どうしてここに?」 先程まで居なかった人物の存在にバイアンは驚く。 「色々と事情があって来た」 まさかカミュに頼まれて弁当を持ってきたというのも面倒なので、彼は適当に誤魔化した。 しかし、氷河とアイアコスが籠からサンドウィッチを出して食べているのである。 バイアンもなんとなくカノンの立場を理解して、それ以上尋ねるのを止めた。 「シーホース。何かあったのか?」 アイザックはバイアンが島の周辺海域について調査している事は聞いていたので、そのまま海底神殿に戻るのだと思っていた。 それが自分たちの所へ再びやって来たのである。 何かがあったのだと察した。 その推測通りに、彼はアイザックの肩を掴む。 「そっちも忙しいかもしれないが、ほんの少しだけ協力してくれないか?」 「どうしたんだ?」 「湖の底に遺跡らしいものがある。 空気が残っているから中を見る事が出来るが、壁が浸水しつつあって崩れるのも時間の問題だ。 湖をしばらくの間凍らせてくれ」 この言葉に、他の闘士達は希望の光を見たのだった。 |
この情報により、彼らは逆にバイアンを急かすように目的の湖へ移動した。 周囲が暗くなってきたとは言え、湖はかなり広大に見える。 アイザックと氷河が二人がかりで湖を凍らせた。 その時間はほんの数秒。 洒落にならない威力だった。 |