(きっと大丈夫) 美穂はそう思いながらも大きな溜息をついた。 久しぶりに見た城戸のお嬢様は、少し陰があったようだがとても綺麗だった。 同じように『女神の宴』に参加するために、隣の部屋で支度をするという。 (……) シオンに頼まれた事とは言え、実際に本人を目の当たりにすると抑えていた何かが出てきそうな感覚に襲われてくる。 彼女は大きく深呼吸をした。 春麗はそんな美穂の様子に首を傾げる。 そこへ席を外していた星華が部屋に入ってきた。 「星華お姉ちゃん。 星矢ちゃんは? まだ怒っている?」 彼女の不安げな様子に、星華はにっこりと笑って答える。 「星矢はヤキモチを焼いただけ。 美穂ちゃんの事、可愛いって言っていたわよ」 しかし、美穂は泣きそうな表情になっていた。 「星矢ちゃんの立場が悪くなったりしていない?」 真剣な表情で聞かれて、星華は言葉に詰まってしまう。 どう見ても弟の場合は自業自得の様な気がするが、美穂は自分が原因だと思っている。 「美穂ちゃん。外へ出てみる?」 その誘いに美穂は大きく頷いたのだった。 (あまりあの部屋に閉じ込めない方が良い) 星華は部屋の中に漂う何か危うい空気を感じた。 それに、だんだんと女官達の注意が散漫になり始めていた。 最初の頃は特に目立たなかったのだが、たまに彼女たちの会話の中に城戸沙織と言う名前と女神アテナが同列に出てくる。 すると美穂が不思議そうな表情になる。 (女官さんたちは無自覚だったみたいだけど……) 教皇から美穂に対して気を使うようにと言う命令が出ているはずなのだが、何処か理解の仕方がズレていた。 星華は同じ部屋にいて非常にヒヤヒヤしてしまう。 支度が終わったのを見計らって、星華は社殿の周辺で呼べば戻れる距離という注意を受けてから美穂と春麗を外へと連れ出したのだった。 |
「さて、ここは何処だろうね」 仲間のさして動揺もしていない言葉にシャイナは怒りが込み上げる。 既に地下道を何時間も歩いていた。 そこはデスクィーン島に似ている気もするが、本当にデスクィーン島なのか確証がもてない。 何しろいくら歩いても地上に出られないのである。 「……早く脱出しよう」 得体の知れないところに何時までも居たくはない彼女は歩調を早めた。 ところがいきなり魔鈴が腕を掴んだのである。 「魔鈴」 「見てみな」 魔鈴が指さした方向の壁には、光の紋様が薄く浮かび上がっていた。 |