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続々・親友 2

「随分、賑やかだな……」
廊下にいる人物に言われて、カノンとソレントは驚く。
「ポセ……、ジュリアン様!」
慌てて言い直して、ソレントは部屋の中を見る。
ジュリアンという言葉に美穂が反応した。
「ジュリアンさん!」
シオンから後で呼ぶと言われていた青年が、向こうから会いに来てくれた。
美穂は彼の無事な姿を見て、涙が零れそうになった。

「無事で良かった……」
そんな彼女に、ジュリアンと呼ばれた青年が近付く。
ところが、青年はそのまま彼女を急に抱きしめたのである。
「ミホ……」
「えっ!」
美穂の耳元で青年は何かを囁くと、そのまま彼女にもたれかかった。
倒れそうになる彼女をカノンが支える。
「ジュリアン様!」
ソレントが慌ててジュリアンの腕を掴もうとした時、

「美穂ちゃんを何処へ連れていくつもりだ!」

と怒りの声が部屋と廊下に響き渡った。
部屋の入り口で、星矢が怒りの眼差しで海将軍達を見ていたのである。

暗闇に佇む少女。
それが白鳥座の聖闘士である氷河の恋人だと、ナターシャは直ぐに分かった。
近づこうとしたが、相手の姿は暗闇に溶け込んでしまう。
この時、何となく奇妙な感じがした。

これは夢なのだと分かっている反面、このまま目覚める事は出来ないような気がして落ち着かないのだ。
三羽の白い鳥が、真っ暗な空を飛ぶ。

奇妙な歌声。 優しい風。

突然、ナターシャは自分の背後を誰かが通ったような気がした。
最初はエリイという少女かと思った。
しかし、違うようにも感じられる。

穏やかな世界。 美しい暗闇。

ナターシャはそこに居るのが怖くなった。
彼女は兄であるアレクサーの姿を探す。

二つの光。 重複する人の影。

何もかもが曖昧で、確認をしようとすると消えてしまう。
誰かが服の袖を捕む。

怖くて声を出そうとした時、ナターシャは目を覚ましたのだった。

(あれはいったい何だっだの?)
ナターシャは今朝方みた夢のを思い出して、溜息をついた。
今まで多くの夢を見てきた。
その中には気妙の一言に尽きるものも少なくはない。
だが、今回は夢という言葉で片づけられないものがあった。
そんな時に、クラーケンの海将軍が闘衣をまとわずにブルーグラードに来たのである。
夢の中で見かけた少女の様子が気になり、ナターシャはアイザックに会わせて欲しいとアレクサーに頼み込んだ。
しかし、クラーケンの海将軍に自分はちゃんと説明出来ただろうか。
そう考えると、胸の内に何か重いものを感じた。
幼い頃、父ピョートルに言われた言葉がナターシャの脳裏に蘇る。

はっきりしないものに無理矢理『言葉』という器を与えてはいけない。
その様なことをすれば、歪んだ部分、その器に収まりきれない部分は生命を攻撃し始める。

「まさか……」
本当にあれは、自分の見た夢という言葉で表現して良いのだろうか。
彼女は自分の考えに怖くなってしまった。