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INDEX
   

続・親友 5

ソレントがカノンを引きずって女神アテナの許へ行った後、イオが海底神殿へ一旦戻る。
スキュラの海将軍は海底神殿へ書類を届けたら、ジュリアンの護衛に付くということで話はついた。
今は海皇がジュリアンの身体を使っているが、何かの拍子にジュリアンに戻ったときに顔見知りのイオが傍に居た方が良いということになったからである。
アイザックはそれまでの僅かな時間だけ、海皇の護衛をする事になった。
聖域の外れの道を、海の神と海将軍が歩く。
宿屋の女将として海皇と海将軍をもてなしてくれた老婦人の所へ戻るためである。
だが、もうすぐ老婦人の家だと言うところで海皇は立ち止まった。
「クラーケン」
「はい」
「女神ニュクスの血統は、退かせることは出来ても滅ぼすことは不可能だ。
場合によっては退け」
海神の言葉にアイザックは緊張する。
「それから、後で私は出掛けたい所がある。
留守番をしていろ」
その無茶な言葉にアイザックは首を横に振り、
「留守番は出来ません」
と、即答したのだった。

魔鈴とシャイナが行方不明になっている。
この情報は、星矢を動揺させるのに十分だった。

「いったい何だよ。それは……」
彼は力が抜けそうになり壁に寄りかかる。
「敵の正体も探らなくてはならないが、いまはそれ以上に重要な問題がある」
アフロディーテの言葉に、部屋の中にいた聖闘士たちが一斉に彼の方を見た。
「どんなことだ?」
シオンの問いに、魚座の黄金聖闘士は静かに答えた。
「女神アテナが日本で銀河戦争というものを行った時、こちらにもある情報が入ってきた。
女神ヘスティアの神殿に、重要人物が戻るかもしれないと言うものだ」
星矢・瞬・紫龍の三人にとって銀河戦争は懐かしいという類のものではない。
ただ、あの闘いが何かの始まりを意味し印象深い。
しかし、三人はその出来事の背後に別の事件が潜んでいたとは夢にも思わなかった。
「女神ヘスティアですか?」
紫龍はどういう意味なのか分からず、師匠である童虎の方を見る。
「女神ヘスティアは竈(かまど)の女神じゃよ。
表向きは中立ということになっておるが、本当はむやみに関わるととんでもない事態を引き起こすから、海も冥界も関わらないようにしているはずじゃ」
童虎の言葉を繋いだのはデスマスクだった。

「人間のいる世界を個人レベルから国家に至るまで、その命運を左右させる力があると言われている。
実際に試したヤツはいないが、嘘であるという判断はつけられない。
あの日本でのバカ騒ぎでは、あらゆる国家がヘスティアの関係者と思われる人物を巡って暗躍していた」
初めて知らされた裏側の事情に、星矢たちは茫然としてしまった。
「結局、そいつは神殿に行けたらしいが、それに関しては聖域の女官の一部と女の聖闘士に任せていた。
あそこは、絶対に男の聖闘士は関わってはならない場所だったからな」

古来より女神ヘスティアの神殿は完全に男子禁制であった。
その徹底ぶりは凄まじく、その神殿にいる巫女は男子と接触したことが発覚すると処分されたのだ。
同時に神殿の関係者は、相手側にも厳罰を要求する。
全ては、巫女達に伝えられる秘術の漏洩を避ける為だった。
そして聖域は地上の守護者である以上、女神ヘスティアの神殿の守護も行っていた。
ところが何時の頃からか、聖域は女人禁制という言葉のもとに女性の聖闘士を迫害したりし始めたのである。

「本来、聖域では女の聖闘士に関しては、"問われても答えず"が鉄則だったらしい。
敵対勢力に彼女達の情報が漏洩すると、向こうは女神達の神殿を守護する女の聖闘士達を真っ先に排除する。
仮面制度はそういう意味合いがあったらしい。
とにかく今や女の聖闘士が居ない以上、女神ヘスティアの神殿で何かあったら俺達が行かなくてはならない。
ただし、生きてここへは戻れないと言う条件付きだ」
その過酷な事態に、誰も何も言えなかった。