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続・親友 4

『命令では駄目だ』

不意に出現した海皇の小宇宙に、先程まで穏やかだった海の波が激しく動き出す。

しかし、カノンは特に態度を変えることなく言葉を続けた。
「命令はしたくない。
だが、どうしてもセイレーンを動かしたいというのなら建前くらいは決めてくれ」
すると海皇ポセイドンはカノンを見た後、ソレントの方を見た。

『 "宴"の事を知った以上、こちらも海闘士のなかで最も優れた奏者を出向かせる必要がある。
そうでないと海の女神達の不興を買うことになるか、向こう99年ほど太古の女神達から無粋だと言われ続けるか、聖域が琴座の聖闘士一人の働きで女神達の賞賛を得たという話を聞かされ続ける。
確かに芸術の女神達もやってくるだろうから、聖域の名声は高まるだろう』

好きな理由を選べと言われて、海将軍達は困惑してしまう。
「命令したのでは、その命令自体を逆手に取る好ましくない勢力がいるということだな」
『……』
海神の沈黙を、カノンは肯定と受け取った。
「セイレーン。断る事が出来るぞ」
カノンの言葉にソレントの目がつり上がる。
「断りません。
むしろ宴にどうやって関わろうかと考えていたくらいです」
その表情に嫌々といった所はない。

(上手く乗せられたな)
イオとアイザックは心の中で、そう呟いたのだった。

(アイオリアとミロは何処へ行ったんだ)
どう見ても無人の部屋に、一枚のメモだけが残されている。
カミュはメモを見て絶句した。
(二人ともデスクィーン島に行ったのか!)
メモを残すだけ律儀だが、彼としては勝手に動くなと怒鳴りつけたかった。
「ミロとアイオリアは居るか?」
同じように部屋にやって来たシュラは、そこにカミュしか居ない事に眉を顰めた。
「あいつらは?」
「こっちの事情でデスクィーン島へ行って貰った。
何かあったのか?」
女神アテナからの命令で、女神ニュクスに関わる事柄は優先事項になっている。
それゆえ、今の聖域にカミュの行動を制限する者は居ない。
「……カミュはそっちの仕事に集中してくれ。
それと、あいつらを関わらせた以上、手綱は握っておけ」
シュラはそう言うと、部屋を出た。
(山羊座か……)
本当にアイザックが探している協力者はシュラなのだろうか。
今の段階ではカミュにも判断が付かなかった。