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星華はやや駆け足で聖域内を移動する。 シオンの依頼を美穂は承諾したが、数時間前に聖域に来た彼女を一人で女官達に預けるわけにもいかず、星華が傍にいることになったのである。 しかし、星華の方でも老婦人に状況を話さないと要らぬ心配を掛けてしまいかねないと思い、一旦彼女は老婦人の家へ戻ったのだ。 星華が老婦人の家の前に辿り着いた時、いきなりドアが開いた。 「あぁ、娘さんですね。 ちょうどよかった」 端正な顔立ちの青年が、にこやかに星華に話しかける。 「ちょっと外へ行って来ます。 薬も貰ってきますね」 青年はそう言って、星華の返事も聞かずに去っていってしまった。 彼女は老婦人の知り合いかと思い青年のことを訪ねる。 すると、ジュリアンという名前だと教えてくれた。 「ジュリアンさん……」 何故、自分が老婦人の娘になるのか。 星華は自分の顔が老けているのだろうかと、少しだけ不安になった。 |
石造りの神殿には至る所に戦闘の爪痕の残っている。 時たま崩れそうな壁の一部から破片が転がり落ちる。 敵であるということしか分からない闘士との闘いは、相手の一方的な攻撃に聖闘士たちは耐えるしかなかった。 向こうは神殿その物を破壊しようとする。 その為、白銀聖闘士たちは最重要地点である血で書かれた紋様に傷が付くことは、何としても防がなくてはならない。 そんな中、魔鈴が身を挺して守ろうと駆け寄った時、意外なことが起こった。 いきなり紋様の辺りから突風が周囲に向かって吹いたのだ。 これにより敵側も白銀聖闘士たちも神殿の壁に叩きつけられる。 そして場の様子が乱れた隙を狙って、敵は逃亡。 魔鈴とシャイナは行方不明となった。 そして短い時間に起こった出来事のため、敵の正体も神殿で何が起こったのかも白銀聖闘士たちには分からなかった。 今、神殿内は白銀聖闘士が整備し、数人の女官達によって清められている。 女神アテナが太古の女神達が参加する“宴”に向かう為である。 「周囲の様子はどうだ?」 ミスティに聞かれて、 「異常は感じられない」 モーゼスは答える。 神殿の外では、太陽が西の空をゆっくりと渡っていた。 |