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続・親友 1

「水瓶座様。どうかなされましたか?」
書庫にやって来た黄金聖闘士を見て、 ダイダロスは手に持っていた書類を見た。
女神ヘカテの神殿に関することかと思ったからである。
しかし、カミュの質問は意外なものだった。

「知恵を借りたい。 重複または二つで一つという組み合わせのもの。
同一にならないもの。これらで想像するものは何だ」
謎々のような質問に、ケフェウス座の白銀聖闘士は首を傾げる。
「範囲が広すぎます」
「では、聖域にあるもの限定という条件を付けよう。
私はそれをアイザックに用意してやらなくてはならない」
その名がカミュの弟子であり海将軍である人物であるという説明を受けて、ダイダロスはようやく状況を朧気に理解した。
そして、何かが彼の中で引っ掛かった。
「この場合、その方に必要なのは協力者ということに思えますが……」
「例えば?」
「聖域に住む人間を虱潰しに調べれば、全員が何かしらの理由で該当するでしょう。
しかし雑兵や一般の人たちに海将軍の手助けが出来るとは思いにくいです。
それに個人に関わるものというのは流動的ですから、人間そのものを示すよりも聖衣などの不変のもので判断したほうが良いように思えます」
その言葉に、カミュは頷いた。
彼自身もアイザックの言う条件の曖昧さに、判断が付けられずにいたからである。

「聖衣の持つ神話で判断をするなら、猟犬座・双子座・魚座が条件に合うと思いますが……」
ダイダロスはこの時、何が自分の中で引っ掛かっていたのかを思い出す。
「もしかすると……山羊座かもしれません」
「山羊座?」
「そうです。 確か古い文字で書かれた本の中に、そんな一文が有りました。
あれは山羊座の聖衣についての文献だったと思います」
彼の脳裏に、当時の記憶が蘇る。
古い文字で書かれた本の解読が行き詰まった時、教皇シオンに教えを請うつもりでダイダロスは教皇の間へ向かった。
だが、そこにいたのは殺意に満ちた小宇宙を持つ見知らぬ人物だったのである。
幼かった彼に出来ることは、素早くそこから離れるということだった。

「……その本は今も残っているのか?」
カミュの問いにダイダロスは首を横に振る。
「女神アテナの威光を損なうと言う理由で燃やされたそうです」
それは太古の知識が詰まった本に対して、知恵の女神を信奉する者がやる事とは思えない所行だった。

(いつまで座っていればいいのかな……)
沙織と共に女神の宴へ行く予定の春麗は、支度がなかなか終わらず椅子に座っていることに少しだけ退屈し始める。
とはいえ、自分が手伝えることは皆無だった。
女官達はそんな彼女の前を慌ただしく行き交う。
そんな中、女官の一人が春麗の知っている少女を連れて部屋に入ってきた。
「美穂さん!」
相手は一瞬春麗のことを不思議そうに見ている。
「もしかして、春麗さん?」
二人にとって久しぶりの再会だった。