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親友 8

オルフェは大人しく、渡された本を読み始める。
(……)
ページを進めていくうちに、彼はとある女神の名で指を止めた。
女神ヘカテ。
恋人の仕える太古の女神は、天上・海・冥界の何処ででも力を制限されることなく行使できる特別な存在と記述されている。
「ここら辺の本にも載っているはずだ」
ダイダロスに言われて、オルフェはようやく机の上に積まれた本に気が付いた。
「こんなにあるのか?」
「残念ながら詳しく書かれた本ではない。どれも数ページくらいだ」
オルフェは何冊かの本を手に取ると中身をざっと確認する。
「すまないが、この二冊だけ借りて行く。書庫を管理する文官達に断っておいてくれ」
「わかった」
「……ダイダロス。色々とありがとう」
オルフェはそう言って閲覧所を出てゆく。
友人の言葉に、彼は何となく嫌な予感がした。
追いかけようかとダイダロスが思った時、入れ替わりに一人の青年が閲覧所に現れた。
「ケフェウス座のダイダロス。尋ねたいことがある」
やって来たのは水瓶座の黄金聖闘士カミュだった。

「美穂ちゃん、元気そうで良かった」
「……星華お姉さん」
二人の少女がお互いに再会を喜んでいる様子は、非常に心温まる光景だった。
だが、シオンはその様子に和むわけにはいかない。
少女たちが落ち着いた頃を見計らって、口を開いた。
「ところで美穂に頼みたいことがあるのだが、話を聞いてくれるか?」
シオンに改まって言われて、彼女は何事かと思いながら頷いた。
星華はなんとなく緊張した表情になり、星矢は明らかに警戒している。
しかし、シオンは星矢の存在を無視して話を続けた 。

「慌ただしい話なのだが、今日の夕方から小さな祭りが催される。
それに美穂も参加してくれないか」
しかし美穂は祭りの性質がよく分からないので、どんな祭りなのかと星矢に尋ねた。
当然、彼は答えられず戸惑ってしまう。
「教皇。祭りって何なんだ?」
「本当にささやかなものだ。 ただ、星の決めた少女の参加が無くては、祭りそのものは失敗に終わる」
シオンは尤もらしく、少女の条件というのを美穂に説明した。
「一人は大地と共に生きる少女。 これは私の親友の養い子である春麗に依頼した。
もう一人は、今日初めて聖域にやって来た少女。 調べてみると美穂だけが条件に合う。
最後は織物や技術の守護者とも言われる少女。
これはグラード財団とかいう多様な組織を統括する少女に依頼した」
美穂はそれが何を意味するのか、瞬時に理解した。
「沙織お嬢さんが一緒なんですね」
シオンは彼女の言葉に驚きの表情を見せる。
「ご存じか?」
「はい……」
「それは良き偶然だ。
なんでも、その財団では古きものにしろ新しきものにしろ、技術に対して助成を行っているそうだ。
この祭りに協力して貰いたいと考え、日本から来て貰った」
そう言いながら、シオンは星矢の方を睨み付ける。
その目は"発言をするな"と言っているも同然だった。