美穂の聖域入りは素早く沙織に伝えられる。 「そうですか」 沙織はいつもと変わらない様子で返事をしたが、内心では多少なりとも動揺していた。 (パラスが……。彼女が聖域に来てくれた) どう対応すべきかと思ったが、シオンが全てを取り仕切ると言う。 彼自身はあったことがない筈なのに、彼女を知っているかもしれないと言われたときはさすがに驚いた。 だが、 彼女には思い当たることがあったのだ。 (シオンが初代の面影を残しているときに気がつくべきだったわ) たしか初代の牡羊座も、女神パラスに対しては色々と好意的に動いていたように思える。 ただ、相手が海将軍となると話は別だった。 (…………) どのような線引きが行われていたのか沙織にはよく分からないが、初代の黄金聖闘士だった男は海将軍に近付かなかった。 今思い返してみると、それはそれで平和な光景なのかもしれない。 (やっぱり牡羊座の黄金聖闘士は海と縁があるのね……) 先の海底神殿での闘いにも、ムウの弟子である貴鬼が後方支援で参戦した。 海の女神たちにとって、牡羊座の黄金聖闘士は特別な意味があるのだろうか。 いくら考えたところで、沙織にはそれ以上は分からない。 ただ、これから何かが起こりそうな予感はあった。 そこへドアがノックされ、隣の部屋で警護の役についていたムウが現れる。 「女神アテナ。牡牛座とアンドロメダが戻りました」 もうそろそろ戻ってくると思っていたので、沙織は頷くと 「通しなさい」 と、命じた。 そして部屋に二人の聖闘士が入ったのだが、その表情は何か戸惑っているようだった。 「沙織さん。冥界側にも話をしたけど、今のところ該当する出来事は無いって言うことだったよ。 それから手紙を預かってきた」 瞬は、一通の手紙を出す。 「パンドラが?」 沙織は丁寧に封を切ると、手紙を読み始めた。 |
ベッドの上で眠っている友人は少しやつれている様だった。 |
穏やかな時間を打ち砕くもの。 |