資料には情報が残っているのに建築物の所在確認が取れない。 |
白銀聖闘士達の動きと前後して、沙織は自分の中である決断を下す。 そして邪魔が入る前に畳みかけるように動いた。 シオンには美穂を出迎えるよう命じ、直ぐさま童虎と春麗を呼んだのである。 「春麗をですか……」 いきなり呼ばれた童虎は、沙織の話にどう返事をしようか躊躇いを見せる。 女神アテナは聖闘士の要と呼ばれる男に、養い子の同行を依頼したのだった。 太古の女神に会いに行くのは闘士ならば名誉な話だが、春麗は一般人である。 危険な場所であることも考慮しなくてはならない。 しかし、春麗は既に行く気になっていた。 「老師。私も沙織さんと一緒に行きます」 紫龍に力を貸してくれた女神は、偶然にも自分に親切にしてくれた精霊の主であった。 この二つのつながりが春麗の決意を強固なものにしていた。 彼女は心の中で、力ある女神が優しいエウリュディケーを危険な目に遭わせて平気なはずがないと思っていたのである。 沙織は女神ヘカテの厳しさも残酷さも承知していたが、春麗の想いもまた理解出来た。 自分もまた同じ気持ちだったからだ。 それでも迷う童虎に沙織は静かに言った。 「一応、オルフェが女神達に音色を捧げるという理由で私たちと同行します」 そして本人は既に、女神の宴に行くための準備に入っていると言う。 「彼の音色でなくては、こちらから宴には行けません」 自分の恋人だった女性と関わりのある女神に会う。 琴座の白銀聖闘士がどのような気持ちなのか推し量ったところで、それしか方法がないのである。 そこまでの決意に童虎は折れるしかなかった。 |