太陽は時と共に西へと傾き始める。 そして夜の気配が濃くなってゆくと、聖域に静かな時間が流れ始めていた。 (何か全てが遠い昔のように思えるな) そう考えながら、アフロディーテは聖域の外れにある社殿跡へやって来た。 過去にあった闘いの激しさを物語る場所は、既に苔が生えて土へと還ろうとしている。 彼は朽ちた壁の向こうに目的の人物がやって来たことに気が付く。 「何かあったのか」 アフロディーテは見えない位置にいる人物に尋ねる。 「カメレオン座の聖闘士を生きて捕らえるよう、女神が命令を出しました」 「保護するつもりか」 「その者の追跡と捕縛はアンドロメダの聖闘士が一人で行います」 相手の言葉にアフロデイーテは眉を顰めた。 「一人で? それだけではないだろう」 「……もしアンドロメダの行動を邪魔する者が現れた時は、追跡者の兄弟子達がその者を排除することになっております」 「勝てなくてもか?」 「これは女神アテナの御命令です」 疑問に思っても逆らう事は許されないという意味を察して、魚座の黄金聖闘士は腕を組んだ。 「ダイダロス。どうやら先手を打たれたな」 しかし、その言葉に返事は無い。 「それでは失礼します」 声の主の気配が消え、その場にはアフロディーテのみが残される。 (確かにアンドロメダなら誰も文句は言わない) 彼はしばらくその場にいた後、聖域の街へと戻っていった。 |
夕暮れにやって来た訪問者を見た時、一輝は嫌な予感がした。 |