幾多の命を喰らい続けた神々の闘衣。 それらは破壊され、大地に還ってゆく。 (ようやっと眠りについたと言うことか……) シオンは足下に転がっている闘衣の破片を手に取った。 それは彼に触られた途端、粉になって風に舞う。 (精進はするべきだが、過ぎたるモノを望まないようにせねばならない) 聖衣はあくまで闘士達と共にあるべきなのだ。 シオンの横を風が吹き抜ける。 黒い砂が舞い上がった。 彼は目を閉じて砂が入らないようにする。 この時、シオンの耳に聞き覚えのある声が届いた。 |
その人物を確かめようとして、シオンは目を開ける。 |
社殿の奧にある部屋では、カミュはベッドで眠り続けている絵梨衣の様子を見る。 氷河も彼女が心配で付き添ってはいるのだが、疲労の為なのか安心したゆえなのか椅子に座ったままベッドに上体を伏せて眠っていた。 傍目から見れば微笑ましい光景なのだが、絵梨衣の顔色はあまり良いとは言えない。 実際、絵梨衣は少し目を覚ましては何も言わずに再び眠るという状態を繰り返していた。 異界との接触。 これにより彼女の体力は、かなり削られてしまったのかもしれない。 それ以上に気になるのは、彼女の意識は本当に此処にあるのかという事だった。 不安を感じつつ二人の様子を見ていると、絵梨衣が再び目を開けたのである。 「黒いマントは何処ですか?」 いきなりの質問だったので、カミュの方が言葉に詰まってしまった。 「黒いマント? エリイが身につけていた物か」 しかし彼女は、 「あれは大事な物なのです」 と言って、再び眠りについてしまった。 カミュは部屋の隅に置かれた机に近づく。 その上には黒いマントが二枚、綺麗に折り畳まれていた。 これは沙織が絵梨衣の身につけていたものや、近くにあったものは持ち出さないよう命じていたからである。 (……) どんな意味で大事なのか。 それが女神や少女にとって災いでない事を、彼は心の中で願った。 |